富士通は10月12日、情報システム構築における構造的問題の解消に向け、現在取り組んでいるシステムの設計工程と生産工程の刷新プロジェクトの概要を公表した。

 宮田一雄経営執行役生産革新本部長は構造的問題として、まず「要件確定の先送り」を挙げる。従来は、顧客とSIerが要件定義をあいまいにしたままでシステム構築を進めてしまい、結果として手戻りによる無駄なコストが発生するという問題があった。

 そこで要件定義の段階でユーザー企業との認識のズレをなくしておくことで、手戻りを食い止める。具体的には、顧客が作成した要件定義書の内容を、富士通が監査しフィードバックすることで品質を高める。特に3億円以上のシステム構築案件に対してはこの取り組みを徹底しているという。

 また、顧客が高品質な要件定義書を作成できるようにするための支援も行う。主に中堅SEから選抜した「ビジネスアーキテクト」(BA)が顧客との接点として、業務要件を洗い出す。富士通ではBAの育成を2006年から始め、現時点で100人に達している。2009年までに300人に増やす計画だ。

 生産工程ではSI業界に根付いている多重下請け構造もあって「開発のノウハウが社内に蓄積されず、生産性や品質を高めにくい」(ソフト開発子会社の富士通アプリケーションズの渡辺純代表取締役社長)という問題がある。そこで、富士通アプリケーションズで実践している「トヨタ生産方式を取り入れたソフト開発」(渡辺社長)を徹底していく。

 例えば開発の見積もりでは、一般的な人月方式ではなく開発画面数を基に測定するといった手法で、オフショア開発や国内のパートナー企業にも全面展開していく方針。加えて、ソフト開発のプロセスやツール、設計書に標準的なモデルを適用することで、プログラムの自動生成などで効率を高めていく。