TDKが参考出展した64GBのSSD。表に10枚(写真では6枚に見えるが、左側4枚は2重に積み重ねて実装してある)、裏に6枚のメモリーモジュールを実装している
TDKが参考出展した64GBのSSD。表に10枚(写真では6枚に見えるが、左側4枚は2重に積み重ねて実装してある)、裏に6枚のメモリーモジュールを実装している
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 TDKは、千葉市の幕張メッセで10月2日~6日に開催された「CEATEC JAPAN 2007」会場において、容量64GBのSSD(solid state disk)を参考出展した。同社は今回の製品を皮切りにSSD市場に参入。国内大手パソコンメーカーが2008年の春商戦向けとして発売するパソコンに組み込まれる予定という。

 同社は以前から、NAND型フラッシュメモリーのコントローラーIC「GBDriverシリーズ」を販売している。同シリーズの一環として、Serial ATAのインタフェース回路を同一チップに集積したSSD向けコントローラーIC「GBDriver HS1」を開発。今回の試作品では、このGB Driver HS1に16個のメモリーモジュールを組み合わせて、1.8型HDDと同サイズのきょう体に収めた。インタフェースは、Serial ATAの小型版であるMicro SATAを採用した。TDKでSSD関連の営業チームを率いる、電子部品営業グループ主幹の中野興一氏は「Micro SATAはできたばかりの規格だが、機器の小型化というトレンドを踏まえ今後普及すると考えている。そのため、Serial ATAより将来性のある規格としてMicro SATAを採用した」とその背景を説明する。

MLCは当初採用を見送り、「性能に制限があると注記するわけにいかない」

 大容量のNAND型フラッシュメモリーでは、1個のメモリーセルに1ビットのデータを記録する2値品(SLC:single level cell)に代わり、1個のメモリーセルに2ビット以上のデータを記録する多値品(MLC:multi level cell)の需要が拡大している。同一容量の記録媒体を低コストで確保できることと、実装面積を縮小できることなどが理由である。半面、書き換え可能回数がSLCは10万回程度であるのに対し、MLCは1万~2万回程度と少ないという課題もある。

 GBDriver HS1は、メモリーモジュールとしてSLCとMLCの両方を使用可能な設計としているが、今回の試作品ではSLCのみを使用する。同社では、「MLCは1年後くらいにラインアップに加えたい」(TDKの中野氏)といい、当面はSLCに注力する姿勢を示している。

 その背景には、MLCの信頼性に対する不安があるようだ。「MLCは寿命が短いという問題がある。試作品のSSDを評価してもらっているパソコンメーカーからも同じ意見を聞いている」(TDKの中野氏)。法人向けパソコンと比較して、信頼性への要求が比較的低い家庭向けパソコンでは、MLCを用いたSSDでも実質的に問題ないとの声も業界内にはあるものの、「パソコンメーカーは製品を販売する際、SSDの性能に制限があるという制約事項をカタログに注記すること自体をためらう。SSDにSLCを採用するとMLCの場合より30~40%程度コスト高になるが、それでもSLCを採用するというのが今のパソコンメーカーの考え方だ」(TDKの中野氏)とする。

 とはいえ、中長期的には大容量のSSDはMLC採用に移行していくことはTDKも認識しており、「GBDriver HS1の後継として2008年に出荷予定のHS3と、MLCのNAND型フラッシュメモリーを組み合わせて、容量256GBのSSDを開発したいと考えている。世の中で言われているロードマップに沿う形で、大容量化とコスト低減を進めていくことになるだろう」(TDKの中野氏)と今後の見通しを語る。

「単なるHDDの置き換えでは、高速になるとは限らない」

 今回の64GBのSSDは既にサンプル出荷済み。「あるパソコンメーカーが、今回の製品をビルトインしたパソコンの開発を進めており、2008年の春商戦に発売される予定だ。他の複数のパソコンメーカーからも問い合わせを受けているが、当社が責任を持ってサポートできる範囲内で、取りあえずは1社に向けて出荷する予定」(TDKの中野氏)という。

 パソコンメーカーとのやり取りでは、主に書き込み速度を向上させるためのチューニングに取り組んでいるという。今回の試作品の読み出し速度は100MB/秒に達しているというが、書き込み速度はまだ要求水準との開きがあるようだ。「当初は、SSDであればHDDより書き込み速度が速くなると見ていたが、単純にSSDを組み込んだだけでは、書き込み速度がHDDより遅くなる場合があることが分かってきた。パソコンメーカーごとに、SSDの実装手法に違いがあり、それが速度の違いの一因になっているようだ」(TDKの中野氏)。こうした点についてノウハウを積んだ上で、2008年以降は納入先を複数のパソコンメーカーに広げていきたいとする。