写真1●食堂に設置した指静脈認証システム
写真1●食堂に設置した指静脈認証システム
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写真2●売店に設置した指静脈認証システム。POSレジと連携している
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 日立製作所は10月5日、指静脈認証を使った決済システム「指静脈マネー」の実証実験を公開した。社員200名を対象にした実験で、社員食堂や社内の売店でクレジット・カード代わりに指をかざして決済を処理する。今後は実験対象者を拡大してデータを収集し、年内には実験結果を踏まえて実用化する方針だ。

 「一度登録しておくと、カードを持ち歩かなくても支払いできることが指静脈マネーのメリットだ」と情報・通信グループ セキュリティ・トレーサビリティ事業部 セキュリティソリューション本部の田代勤 本部長は説明する。指静脈のデータは、クレジット・カードのサインや暗証番号の代わりとして、本人を特定するために利用できるのが特徴だ。指静脈データにクレジット・カードの情報が紐付いているため、カードの提示が必要ない。例えば、スパやプールなど、物理的にクレジット・カードを持ち歩けない場所での利用に効果が高いと言う。同社は、「ホテルや会員クラブなどのサービスとして導入し、高額決済の電子マネー市場を狙う」(田代 本部長)方針だ。

 日立製作所は9月1日から3カ月間、川崎にある事業所を対象に、指静脈マネーの実験を実施している(写真1、写真2)。実験には、セキュリティ・トレーサビリティ事業部の200名が参加。事前に指の静脈データを専用サーバーに登録した。食堂や売店で、POSレジなどに接続した指静脈認証用の端末に指をかざすと、登録済みの静脈データをマッチングして個人を特定する。続いて、紐付いているクレジット・カード情報を再びPOSレジなどに返信し、決済を処理する仕組みだ。

 同社では従来、社員証を兼ねたクレジット・カードをレジに接続したカードリーダーに通して決済処理をしていた。「食堂で、食器などを載せたトレーを持ちながらカードを取り出すのは不便だった。指静脈認証はカードを取り出す手間が要らず、実用的だと効果を実感した」(セキュリティ・トレーサビリティ事業部 セキュリティソリューション本部 セキュリティシステムソリューション部の中西潤 部長代理)と話す。