写真●英BTグループテクノロジー&イノベーション日本・韓国担当のヨン・キム副社長
写真●英BTグループテクノロジー&イノベーション日本・韓国担当のヨン・キム副社長
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 「我々は,固定,モバイルだけでなくその他の技術を融合したサービスを提供するプロバイダへと変わっていく」。英BTグループテクノロジー&イノベーション日本・韓国担当のヨン・キム副社長は10月4日,NGN(次世代ネットワーク)の最新動向を解説する専門セミナー「NGN Summit」の講演で,決意をこう語った。講演の題名は「始まった21CN:オープンイノベーションで多様なサービスへ」。

 BTは現在,英国内で「21世紀ネットワーク(21CN)」と呼ぶNGNの展開を進めている。既に35万のユーザーが21CNを利用しており,2011年までに英国全土3000万回線の電話回線をNGNに置き換える計画である。その時点で,従来の公衆電話網(PSTN)は廃止する方針だ。この理由をキム副社長は,「NGNとPSTNを同時に構築・運用すると年間10億ポンドのコストが余計にかかる」と説明する。

 キム副社長は,21CN上で通信だけではなくITサービスを積極的に提供していく姿勢を打ち出している。「これからはあらゆるITサービスがNGNにつながるようになるため,BTもITサービス・プロバイダに変わる」(キム副社長)。

 BTがITサービスに傾倒する背景の一つには,従来の電気通信事業の収益モデルの限界がある。キム副社長は,競合の通信事業者が固定,携帯電話で格安のサービスを提供している現状を示したうえで,「イギリスでは距離や時間で利益が上がるわけではなく,従来のテレコミュニケーションの収益モデルが成り立たなくなっている」と指摘する。

 そこで,BTはFMC(fixed mobile convergence)サービス「BT Fusion」やIPTVサービス「BT Vision」,ビデオ電話,ゲーム,VoIPなどブロードバンドを活用したさまざまなサービスを展開中だ。これらのサービスは,家庭にホーム・ハブを設置して21CNに接続して利用する。

Web21CでAPIを提供

 キム副社長は,21CNをオープンなプラットフォームであることを強調し,サービスの拡大を模索している。例えば,情報家電を活用したサービスもその一つ。Wi-Fi接続の機能を搭載したデジタルカメラで撮影した画像データを,屋外から家庭に直接送って印刷できるようにする例を挙げる。ただし,端末の種類やメーカーの数が多すぎるために,BTだけの力であらゆる端末をNGN対応にするのは困難。新たなサービス開発でも,サード・パーティーの協力が不可欠だ。

 そこで,BTは「Web 21C」と呼ぶWebサイトを開設し,21CN上でのサービスを開発するためのAPI(application programming interface)の配布を開始した。サード・パーティーは,APIを使うためにBTとわざわざ契約を結ぶ必要はなく,新しいサービスを自由に開発できるという。「BTだけの力で魅力的なサービスを開発できるとは思わない。外にはもっとサービスを開発できる力がある。そんなモデルを開発していきたい」と,キム副社長は強調する。