図1:講演する日本IBMの渡邉源太氏
図1:講演する日本IBMの渡邉源太氏
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図2:Project Big Greenでは5つのアプローチで,データセンターの省電力化を進める
図2:Project Big Greenでは5つのアプローチで,データセンターの省電力化を進める
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図3:「水冷式ヒートエクスチェンジャー(RDHX)」で効果的にサーバーを冷却する
図3:「水冷式ヒートエクスチェンジャー(RDHX)」で効果的にサーバーを冷却する
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 10月4日に開催された「グリーンITシンポジウム」で日本IBM System x アドバンスト・テクニカル・サポート アドバイザリーITスペシャリストの渡邉源太氏(図1)が登壇し,同社が取り組むデータセンターの消費電力量削減プロジェクト“Project Big Green”について講演した。「Project Big Greenでは,省エネ機器の導入から建物の設計,運用管理に至るまで,トータルにエネルギー効率の向上を図っていく。例えば2300平方メートルクラスの平均的なデータセンターならば,電力消費量を約42%削減できる」と渡邉氏は説明する。

 Project Big Greenでは5つのアプローチによって,データセンターの省電力化を進める(図2)。(1)「診断」では,電力消費の現状を測定し,削減目標を設定する。(2)「建設」では,効率のよいデータセンターを設計し,建設もしくは改修を行う。(3)「仮想化」では,ITリソースを仮想化技術によって統合して,さらなる省電力化を図る。(4)「管理」では,電力管理ソフトウエアを使い,消費電力を定常的に制御する。(5)「冷却」では,水冷式熱交換器など新しい技術を使って効果的に冷却する。

 同社は,この5つのアプローチを具体的に実施する製品・サービス群を用意している。例えば,「診断」のメニューとしては,データセンターの熱分布を解析する「サーマル・シミュレーション・サービス」などがある。また「建設」のメニューとしては,ケーブル敷設のための気流最適化アセスメントや,環境配慮型ビルの企画・設計サービスなどを提供する。

 「Project Big Greenで中心的な役割を果たすのが,ブレード・サーバーのBlade Center」と,渡邉氏は話す。「Blade Center HS21」は,デュアルコアのXeon5160を2個,2Gバイトのメモリーを4個搭載したブレード・サーバーだが,同じ構成のラック型サーバーのSystem x 3550に比べ,消費電力を約30%削減できる。またハード・ディスクではなく,半導体ドライブを使うことで,消費電力を87%削減でき,MTBF(平均故障時間)も約3倍に向上し信頼性が高まるという。

 さらにメインフレームで実績のある冷却技術の「水冷式ヒートエクスチェンジャー(RDHX)」をブレード・サーバーに採用(図3)。タワー型の高密度ラックの場合,サーバーの熱で温まった空気は部屋の上方に溜まり,そこだけで循環するために部屋がなかなか冷えず,空調コストがかかるという問題がある。これに対し,RDHXを採用したラックでは内部を流れる液体が排気を冷やすため,サーバーを効果的に冷却することができる。

 実際にRDHX技術を導入した,ジョージア工科大学のシステム・バイオロジー研究センターのスーパーコンピュータ“Razor”の事例が紹介された。このコンピュータは,「Blade Center LS20(デュアルコアOpteron×2個搭載)」×1000台で構成されているが,12台のラックすべてにRDHXを採用することで効果的な空調を実現した。「RDHXを採用せずに空調設備の増強だけで対応した場合に比べ,導入コストで40%削減,ランニングコストで15%削減したほか,部屋の騒音を大幅に低減できた」と渡邊氏は強調する。

 Project Big Greenの日本での展開はまだこれから。データセンターの規模やIT資産などに応じた省エネルギー・ソリューションを提供していく。