伊藤忠テクノソリューションズのデータセンター事業グループ技術戦略室に勤務する赤木央一氏
伊藤忠テクノソリューションズのデータセンター事業グループ技術戦略室に勤務する赤木央一氏
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飲料メーカーのWebサイト運用のアウトソーシング事例では,CPUなどサーバー機の電力消費を抑え,処理能力あたりの電力を最大で20%程度削減した。
飲料メーカーのWebサイト運用のアウトソーシング事例では,CPUなどサーバー機の電力消費を抑え,処理能力あたりの電力を最大で20%程度削減した。
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 「データセンターの消費電力が増加の一途を辿っている。積極的な電力対策が必要だ」---。SIベンダーの伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は,システム開発に加え,顧客のシステム運用を請け負うデータセンター事業を展開している。同社のデータセンターの総床面積は,およそ7万平方メートルに達する。同社でデータセンター事業グループ技術戦略室に属する赤木央一氏は10月4日,「グリーンITシンポジウム」で講演し,データセンター運用から見えた熱問題について語った。

 赤木氏はまず,コンピュータの集積度が高まっている点に触れた。メインフレームの時代は一つの区画で1KVA(ボルト・アンペア)程度だったが,UNIX機で2KVA~4KVA程度に,PCサーバーで1ラックあたり4KVA程度に,Web系のPCサーバーでは1ラックあたり4KVA~6KVA程度にまで膨れ上がっていると指摘する。いずれは,1ラックで10KVAを超える時代が来るかもしれないと言う。

 こうしたITシステムの消費電力の増加は,データセンターの熱問題を生む。熱問題とは,ITシステムを稼働させるための電力消費が拡大し,これによって空調にかかる電力消費も拡大する,という悪しき連鎖を指す言葉。この一方で,J-SOX法などの規制により,管理すべきデータが増大している。こうした状況の下,CPUやサーバーだけではない,データセンター全体の熱を効率よく処理する術が強く求められていると語る。

 PCサーバー・ベンダーである日本ヒューレット・パッカードが提供した資料によると,データセンター全体でのIT機器と空調設備との電力消費量の比較において,従来のデータセンターではIT機器が33%,空調設備が63%,AC変換ロスが4%である。IT機器が消費する電力よりも,そのIT機器が排出する熱を処理するための空調設備のほうが,電力消費が大きいのだ。「IT機器以外の電力消費を減らさなければならない」(赤木氏)。最新型のデータセンターでは改善され,IT機器と空調設備の電力消費が半々となり,IT機器47%,空調設備47%,AC変換ロス6%となる。

 CTCでは,インバータ空調方式の採用,エネルギ密度の高い充電地であるNAS電池を用いた夜間電力の有効活用,省電力CPU/サーバーの採用,仮想化技術による稼働効率の向上など,様々な方法でデータセンターの電力消費を抑える努力をしている。また,某飲料メーカーのWebサイト運用を受託した事例では,サーバー機器の更改により,成果を上げた。同事例では,米AMDのCPUを搭載した米Hewlett-Packardのブレード・サーバーを用いることにより,従来と比較して処理能力あたりの電力を,最大で20%程度削減することに成功したと言う。