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写真1●NTTドコモ代表取締役副社長の山田隆持氏(撮影:吉田明弘) |
まず山田副社長は,携帯電話業界の状況として「世界では30億台を超え,どんどん伸びているところ。その中でも中国とインド,日本をかかえるアジア・大洋州が40%と高い比率を占めている」とワールドワイドの成長基調を説明。次に国内の状況として,「番号ポータビリティなどにより競争は激しくなっている。純増シェアでは“一人負け”などと報道されるが,これを挽回していきたい」と語った。
山田副社長がドコモの反撃のキーワードとして繰り返していたのが,「ベストサービスの提供」である。個人であれ法人であれ,それぞれのユーザーにとってベストなサービスが提供できれば,ユーザーはドコモから離れられなくなる。それにより解約率を下げて,「新規加入数-解約数」である純増数を大きくしようとの計算だ。「ドコモを愛してもらい,長く使ってもらえるようなベストサービスを提供していくことが基本コンセプト」(山田副社長)。
生活の一部に溶け込むサービスで利便性をアピール
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写真2●サービス提供における3つの方向性 [画像のクリックで拡大表示] |
定額制サービスはパケット定額サービスの「パケホーダイ」などを提供している。すでに「パケホーダイは1152万契約,契約率は28%に上り,多くのユーザーが定額のパケット料金で各種の情報を取り込むようになっている。今後,パケットの通信速度は高まり,より多様なサービスを提供できるようになる」(山田副社長)。
携帯電話による生活アシストについて山田副社長は,「ドコモの携帯を持っていると便利と思ってもらえる部分」にその価値があることを強調した。「ケータイのアラームで目覚め,定期券などとして交通機関で利用し,おサイフやクレジットカードにもなり,オフィスや自宅の鍵として使う。こうしたサービスは,ユーザーの要望が非常に多様だが,半面で要望に応じたサービスを提供できれば利便性を直接感じてもらえる。多くの要望を取り込んで,さまざまなサービスを提示していきたい」。
国際分野では,自分の端末を海外に持ち出して使える「自端末ローミング」の拡大を挙げた。3G+GSMのデュアル端末や国際ローミング対応の3G端末が増えたことから,NTTドコモの国際ローミング利用者のうち自端末でローミングする比率は64.9%に上っていることを報告。ユーザーの要望に応えてサービスを提供してきた結果と説明した。
低コストで高速・高機能なインフラを作る
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写真3●ネットワーク高度化のロードマップ [画像のクリックで拡大表示] |
一方の端末開発では,「共通プラットフォーム化」「ワンチップ化」をキーワードとして挙げた。個々のアプリケーションは端末メーカーが個性を発揮する部分として個別に開発できるようにするが,それを支えるプラットフォームは高機能OSとして共通化することで,開発のコストの低減や期間短縮につなげる。また,これまで2チップ構成だった携帯電話の心臓部を1チップ化して低コスト化と低消費電力化を進める。こうした取り組みにより「すでに端末のコストは下がる傾向にある。今後は高度な機能を取り込んでも“価格が高くならない”携帯電話を提供したい」(山田副社長)という。
法人向けも「ベストサービス」戦略
講演の最後には,法人向けのサービス戦略の説明もあった。ここでは,「トータルソリューション」と「B2B2Cサービス向けのサービス提供」の2つの側面から,法人ユーザーに向けた“ベストサービス提供”の考え方を披露した。
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写真4●B2B2Cサービスに向けたドコモのサービス提供イメージ [画像のクリックで拡大表示] |
また,消費者に対してサービスを提供するB2B2Cソリューションについて山田副社長は,「NTTドコモがASP(application service provider)となって,ユーザー企業が欲しいと思うソリューションの選択肢を用意する。例えばクーポンの発行やモバイル会員証などの多くのメニューをNTTドコモがサービスとして用意し,パートナ企業はコンテンツに注力することでバリューチェーンの拡大を目指せる」(写真4)。
こうした取り組みが一つ一つ結実することで,個人や法人を問わずそれぞれの利用者にとってのベストサービスにつながり,それがNTTドコモを支える。競争を勝ち抜くには“秘策”はなく,地道にユーザー指向のサービスを積み重ね,顧客の満足度を高めることこそが戦略のようだ。