写真●総務省総合通信基盤局の竹内芳明電気通信技術システム課長
写真●総務省総合通信基盤局の竹内芳明電気通信技術システム課長
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 「オール・ジャパンでIPを超えるネットワークを開発しよう」--。総務省総合通信基盤局の竹内芳明電気通信技術システム課長は10月4日,NGN(次世代ネットワーク)の最新動向を解説する専門セミナー「NGN Summit」での講演で宣言した(写真)。講演のタイトルは,「NGN標準化の最新動向-基盤ネットワークのパラダイムシフト-」である。

 竹内課長はまず,NGNを導入する意義と標準化動向を説明した。近年,ネットワークのIP化と広帯域化が進展したことによって,ネットワーク上で多様なサービスが展開されるようになった。近年の日本における経済成長のうち40%あまりは,IPネットワークに代表される情報通信技術がもたらしているという。

 しかしIPネットワークは,セキュリティや信頼性では従来型の回線交換ベースのネットワークよりも見劣りする。そこで回線交換のセキュリティや信頼性と,IPネットワークのサービスの多様性や柔軟性を併せ持つネットワークが求められるようになった。それがNGNだと位置づける。

 このような回線交換とIPネットワークのいいところ取りをしたNGNの標準仕様の策定を,ITU-T(国際電気通信連合の電気通信標準化部門)のNGN-GSI(Next Generation Network Global Standards Initiative)が進めている。現状では,トラフィック管理の手法やQoS(quality of service)など26件の標準化勧告が承認されている。

 今後は各国の通信事業者やメーカーが仕様に基づいた実装を進めるフェーズに移る。竹内課長は,「各社の製品・サービスの相互接続性の確保や,通信事業者間のネットワーク接続のルール整備などが課題になる」と予測した。

NGNもIPネットワークがベース

 NGNで先行する日本では,NTTグループが間もなくNGNの商用サービスを開始する予定である。ところが竹内課長は,「NGNもIPネットワークをベースにしている以上,克服しきれない課題を抱える」と指摘する。長年にわたって機能を一つずつ追加していったため,ネットワークが複雑化。新たに機能を加える際も整合性を取るために,複雑なものになりがちだとする。

 このような問題意識に基づいて,総務省は10月2日「新世代ネットワーク推進フォーラム」の設立を目的とした発起人会を開催した。また10月1日には,総務省所管の独立行政法人である情報通信研究機構が,「新世代ネットワーク研究開発戦略本部」を設置している。いずれも,IPネットワークの次の世代を見越した新しい設計思想のネットワーク構築を目指す組織である。2015年以降の実用化を目指す。竹内課長は,「オール・ジャパン体制で,欧米に先駆けてIPを超えるネットワークを開発しよう」と宣言し,講演を締めくくった。