NTTで代表取締役副社長を務める宇治則孝氏(撮影:皆木優子)
NTTで代表取締役副社長を務める宇治則孝氏(撮影:皆木優子)
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国内の通信サービス加入数の推移
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 「よく“NGN V.S. インターネット”という対決の構図でとらえられるが,これは違うと思う。NGNとインターネットは共存する」---。NTT副社長の宇治則孝氏は2007年10月3日,幕張メッセで開催中の「CEATEC JAPAN 2007」の基調講演で,次世代ネットワーク「NGN」の姿を紹介した。

 宇治氏がまず指摘したのは,日本のネットワーク利用環境の変化である。2007年現在,インターネットの“のべ契約者数”は,全人口とほぼ同じ程度に達しているという。音声を中心とした電話の利用が減り,代わりにデータ通信が増えている。

 データ通信のブロードバンド化も目覚しい。内訳は,FTTHが966万人,xDSLが1379万人,CATVが369万人。特に,xDSLからの切り替えなどによって,FTTHが急速に伸びている。携帯電話の世界でも,MOVAからFOMAへのシフトが進んでいる。ブロードバンド利用料金は,日本が世界で最も安い。このように,IPアプリケーションを快適に使うための環境が整備されつつある。

 こうした背景の下,NTTは社会と文化を支えるインフラとしてオープンなネットワークを構築することを中期経営計画に挙げている。サービス事業者が各種のアプリケーション・サービスを提供できる環境を,NTTが用意して支えていくという。その環境こそ,NGNである。NGNをベースに,ネットワーク・サービス事業者を含んだエコシステムを構築していく考えだ。

 NGNを構築するにあたっては,既存の2つの通信サービスの良いところを取り入れることにしたという。サービスの一つである電話網は,安心・安全を追求したライフライン。もう一つのサービスであるインターネットは,分散型で自由なネットワークだ。NGNは,セキュリティや信頼性を確保しながら,IPアプリケーションを利用しやすいネットワークにするという。NGNの特徴として宇治氏は,QoS,セキュリティ,信頼性,オープンなインタフェース,の4つを挙げる。

 NGNによって実現するアプリケーションとして,宇治氏は4つほど例を挙げた。一つは,遠隔病理診断支援である。医師が手術中,専門医に映像を見せてアドバイスを仰ぐという使い方だ。二つめは,映画館に映画のディジタル・データをデリバリ(配信)する用途。郵送するよりもコストが安く済むという。三つめは,家庭にハイ・ビジョン映像を送る用途。最後が,NGNの回線識別情報を既存の認証技術と組み合わせた複数要素認証である。