経済産業省が全国の学校にLinuxなどのオープンソース・ソフトウエア(OSS)を導入する「Open School Platform(OSP)プロジェクト」の今年度の詳細が明らかになった。全国三十数校の合計1400台以上のパソコンにOSSを導入する。地方のITベンダーが,利益の出るビジネスとして学校へのOSS導入・保守サポートができるようにするためのモデルの確立を目指す。校務(学校の事務)をOSSベースのシンクライアントで行うことで情報漏洩の防止を図る学校もある。またシニアが設立したNPO法人がサポートを担当する学校もある。
Open School Platformプロジェクトは経産省が実施している教育機関へのオープンソース・ソフトウエア導入事業。2004年度に「学校教育現場におけるオープンソースソフトウエア活用に向けての実証実験」(関連記事)として開始された。2005年度から財団法人コンピュータ教育開発センター(CEC)が委託を受けて実施している。2006年度は6校に導入しLinuxと教育用アプリケーションを整備,「OSP基本パッケージ」(関連記事)としてCD-ROM化した。CD起動のLinux「KNOPPIX」をベースにしており,インストールすることなく使用できる。2007年度の事業ではこのOSP基本パッケージを三十数校,1400台以上と大規模に導入する。
学校にとってOSSはライセンス・コストの抑制が期待できるが,Windowsに比べ慣れた教員が少ない,Windows向けに作られたコンテンツの中に正しく動作しないものがある,周辺機器によってはドライバ・ソフトがなく使用できないといった難点もある。そのためベンダーによるサポート・サービスも求められるが,学校側にとってトータルでコスト削減になることも要求される。不具合を解消し効率的なサポートの方法やツールを整備し,公開することで,地方のITベンダーが,利益の出るビジネスとして学校へのOSS導入・保守サポートができるモデルを確立することが今年度の大きな目標となっている。
今回,サポート提供者として4社と1NPO法人が採択されている。
リモートでのサポートと地方ベンダー連携で17校810台に導入
アルファシステムズは山形県から大分県までの高校および中学17校の810台にOSP基本パッケージなどを導入する計画だ。OSSデスクトップを使用する生徒の数はあわせて2324名。全国の学校を効率よくサポートするために,メールやオープンソースのコミュニティ・サイト構築ツールXOOPSを活用し,リモートでのサポートを行う。また地方のベンダーと提携し,地方ベンダーが一次窓口となる形でのサポートも実施。これらを通じてビジネスモデルの確立を目指す。今回地方ベンダーとしては大分県のハイパーネットワーク社会研究所,OLGO,大分シーイーシーが参加する。
シンクライアントを校務に利用し情報漏洩防止
富士通岡山システムエンジニアリングは6校で合計188台にOSSデスクトップを導入する予定。うち2校(総社市立昭和小学校,倉敷市立豊洲小学校)では,ネットワークブート型のシンクライアントによる校務環境を構築する。クライアント側にデータが残らないようにすることで,情報漏洩の発生しにくい環境を作る。
リースアップの中古PCやセカンドライフ利用授業も
アイズは近畿・東海地区の4校で,合計151をにOSSデスクトップを導入する計画。亀山市立 中部中学校および亀山中学校ではリースアップした中古パソコンでOSP基本パッケージをCF(コンパクトフラッシュ)に収納しCFから起動する形態で,調べもの学習に使用する。
滝学園滝高校では,Rubyを使い簡単なWebアプリケーションを作成する授業を行う予定だ。京都学園中等高等学校では,Second Lifeでのシミュレーションを利用した授業の計画もある。
また協栄鯨合資会社は福津市立福間東中学校で,リースアップした中古パソコン8台にOSP基本パッケージを導入する。
50~60歳台のシニアが設立したNPO法人がサポート
シニアSOHO横浜・神奈川は,50~60歳台のシニアが設立したNPO法人である。今回,6校に合計279台を導入する予定だ。
福島県立盲学校のサポートも担当しており,日本語読み上げソフトも導入する。
シニアSOHO横浜・神奈川はIT関連の職歴を持つシニアも多く在籍するが,OSSを本格的に事業として行うのは今回が初めて。そのため,OSSを専門に手がけるオープンソース・ジャパンと提携し,技術を補完する。
■アルファシステムズ 担当校
■富士通岡山システムエンジニアリング 担当校
■アイズ 担当校
■協栄鯨 合資会社 担当校
■NPO法人 シニアSOHO 担当校
|