アイピーモバイルは,森トラストが杉村五男・同社取締役会長への株式譲渡契約を結んだ件について(関連記事),契約は杉村会長の個人的な判断であったことを明らかにした。これは,9月20日昼に竹内一斉代表取締役社長と杉村会長が電話で会談して判明したという。さらに竹内社長は杉村会長に対し,経営を混乱させた責任を取って取締役会長を辞任することを要求した。

 アイピーモバイル側の見解では,事の経緯は以下の通りだったという。9月19日午前に森トラストからアイピーモバイル経営陣に対し,アイピーモバイル株の買い取り要請があった。これに対し,アイピーモバイルの経営会議では全会一致で否決。アイピーモバイルとしては,自社株の買い取りを行わない方針とした。しかし,杉村会長は個人的な判断で株式の買い取りを決めたという。「杉村氏も経営会議には出席していたので混乱している。アイピーモバイルの株式は,経営会議の承認を経ないと譲渡できないという制限があるため,杉村氏の買い取りを認めるかどうかは経営会議で判断する」(アイピーモバイル)としている。

 一方,森トラストはこうした経緯ではなかったとしている。「9月18日にネクストウェーブ・ワイヤレスから買い戻しの要請を受けた段階で,免許を返上する方針で検討したいとアイピーモバイル経営陣に打診した。しかし,18日遅くにアイピーモバイル経営陣から免許返上は避けたいとの返答があった」(森トラスト)。森トラストによると,同社が7月13日にアイピーモバイルの筆頭株主になる段階で「あくまでも,通信事業を手掛ける力のある株主を見つけるまでという約束での保有だった」という(関連記事)。「我々は通信が本業ではない。ネクストウェーブから買い戻しの打診があった時点で,当初の約束通り免許を返上する方針で検討しようとした」(森トラスト)。

 この状況が変化したのが9月19日。「アイピーモバイルの杉村会長が仲介者を伴って我々に接触し,アイピーモバイル株の買い取りを提案してきた」(森トラスト)。そのため,森トラストは杉村会長に株式を譲渡する契約を締結したという。仲介者の詳細については非公表とした。

 以上のように,アイピーモバイルと森トラストの説明には食い違う点が多い。ただいずれにしても,近日中に,アイピーモバイルの株式はネクストウェーブから森トラストに譲渡される。森トラストに株式が異動した後の行方は,アイピーモバイルの経営会議次第ということになりそうだ。

 アイピーモバイルは,森トラストの森章代表取締役社長の意向を聞き,今後の方針を協議したいとしている。

■変更履歴
記事掲載当初,「アイピーモバイルの取締役会」としていたものは,正しくは「アイピーモバイルの経営会議」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2007/09/25 16:25]