総務省の電気通信事業紛争処理委員会は9月21日,日本通信がNTTドコモとの相互接続に関して総務大臣の裁定を申請していた件(関連記事)について具体的な審議を開始した。紛争処理委員会は通信事業者間で生じている紛争の公正な解決を図る機関。

 日本通信はMVNO(仮想移動体通信事業者)として携帯電話網を利用したサービスを展開するため,2006年12月にNTTドコモに対してネットワークの相互接続を要望。しかしその後,NTTドコモとの協議が不調となり,2007年7月に総務大臣の裁定を求める申請を出した。

 日本通信が裁定を要望した内容は,(1)NTTドコモの設備を利用する部分は日本通信の意向に関係なく,NTTドコモがサービスの内容や運用を独自に決められるとする主張に合理性はあるか,(2)サービスの料金設定権をどうすべきか,(3)接続料は帯域幅課金とすべきか,(4)接続料はどのように決めるか,(5)相互接続に当たって生じる設備の改修,開発費などはどう対処すべきか--の5点である。

 総務省は日本通信とNTTドコモの双方の主張を踏まえた上で,(1)と(4),(5)は裁定せず,(2)の料金設定権は日本通信が「エンドエンド料金」を設定するのが妥当,(3)の接続料は帯域幅課金が妥当とする裁定案を紛争処理委員会に提示した。(1)と(4),(5)は判断基準を示した上で今後も両社で引き続き協議すべきという位置付けで,(2)と(3)は「競争促進」「利用者利益」「電気通信の健全な発達」の三つの観点から上記のような結論を出したという。

 紛争処理委員会の審議は一部非公開。審議後の会見で委員長の森永規彦・大阪大学名誉教授は「裁定案について,総務省の電気通信基盤局,日本通信,NTTドコモの三者に対してそれぞれ文章で質問を出すことにした。その回答を踏まえ,裁定案をもう一度精査して総合的に判断する。携帯電話事業者とMVNOの相互接続は内容が複雑で,MVNOの新規参入事例としても注目されている。このことを踏まえて慎重に検討したい」とコメントした。審議の期間については「10月末までにできるだけ早く結論を出したいが,その後も様々なプロセスがあり,最終的に決着が付くのは数カ月後になるかもしれない」(同)という。

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