写真1●ソニー・コンピュータエンタテインメントの平井一夫社長
写真1●ソニー・コンピュータエンタテインメントの平井一夫社長
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写真2●PlayStation,同2,PLAYSTATION 3およびPSPの累計販売台数
写真2●PlayStation,同2,PLAYSTATION 3およびPSPの累計販売台数
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 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の平井一夫社長(写真1)は9月20日,同日開幕した「東京ゲームショウ2007」で基調講演を行い,最新世代のPLAYSTATION 3に加えて,PlayStation 2や携帯ゲーム機のPSP(プレイステーション・ポータブル)に関しても施策を強化することを明らかにした。

 平井社長はまず,前世代に当たるPlayStation 2のビジネスの現状を説明した。「前世代」とはいえ,PlayStation 2は新興市場や欧米を中心に,現在も好調に売れ続けている(写真2)。初代PlayStationは,累計の売上台数が1億台を突破するのに11年かかったが,PlayStation 2は6年で売上台数が1億台を突破。2007年現在は,累計で1億2000万台売れている。ここ2年で2000万台売れた計算だ。

 平井社長は「PlayStation 2が,初代PlayStationよりも息の長いビジネスになる。ソフトウエアは全世界ですでに9000タイトルが発売され,累計販売本数は12億本に達する。これからも300タイトルのリリースが予定されており,新興市場を中心に,日米欧でPlayStation 2のビジネスに力を入れていく」と語っている。

 続いて平井社長は,本日,新モデルを発売したPSPの現状についても説明した。「われわれは,携帯ゲーム機市場ではチャレンジャーだったが,2004年の発売以来,累計で2600万台のPSPを販売している。欧米では早くから,『Grand Theft Auto』や『MidNight Club 3』といったミリオン・セラーが存在したが,日本でもカプコンの『モンスターハンター・ポータブル・セカンド』が初のミリオン・セラーとなり,現在までに140万本が売れている」と,ビジネスが好調に推移していることを強調した。

PSPでPS3をネットワーク・ブート

 今回の基調講演では,PSPに関するニュースもあった。PSPには,PLAYSTATION 3とネットワーク経由(LANまたはインターネット)で連携して,PLAYSTATION 3で動くゲームをPSPで遊んだり,PLAYSTATION 3に蓄積されている動画や画像,音楽をPSPで再生する「リモート・プレイ」という機能が備わっている。SCEでは今後,このリモート・プレイの機能をネットワーク経由でアップデートし,スタンバイ状態にあるPLAYSTATION 3をネットワーク経由で起動する機能を追加することを発表した。

 平井社長は「PSPは,PLAYSTATION 3のコントローラになり,ゲームをより楽しくできる。例えば,PSPの音声入力機能をPLAYSTATION 3で使えるようにしたり,複数のPSPがネットワーク経由でPLAYSTATION 3にアクセスして,PLAYSTATION 3のゲームを観戦したりできるようになる」と語っている。

開発者やユーザーの声に耳を傾ける

 PLAYSTATION 3に関して平井社長は「一気呵成(かせい)の立ち上げとはいかなかった」と総括する。その上で「今一度,PLAYSTATION 3はゲーム機だと位置づけ,いかに楽しいゲームを提供するか,そこに注力する」(平井社長)と力説する。

 ゲーム・タイトルを充実させる施策として平井社長は,(1)開発環境の改善,(2)SCE自身によるゲーム・タイトル制作,(3)ハードウエアのコストダウン,(4)ユーザーの声に耳を傾ける--という4点を挙げた(関連記事を参照)。

 「ユーザーの声に耳を傾ける」ことの一例として挙げたのが,本日発表したPLAYSTATION 3用の振動機能付きコントローラである。PlayStation 2までは,有線コントローラに振動機能が備わっていた。PLAYSTATION 3の標準コントローラには振動機能が無いが「PLAYSTATION 3を発売してから,ユーザーからの問い合わせで最も多かったのが,振動機能の復活だった」(平井社長)という。

Gran Turismo新作はオンラインでも販売

 さらに平井社長は,いくつかのニュースを発表した。

 ドライブ・ゲームの新作「Grand Turismo 5 Prologue」は12月13日に発売する。ディスク・メディアの販売だけでなく,オンラインのダウンロード販売も行うことを明らかにした。

 仮想世界サービスである「PLAYSTATION Home」に関しては,当初は2007年内の開始を予定していたが,「より完成度を上げる」(平井社長)ために,サービス開始を2008年春に延期した。

 また,「PLAYSTATION Store」の利便性向上を図るために,今後はPLAYSTATION Storeをパソコン向けにも公開することも明らかにした。パソコンにPSPを接続すれば,ゲーム・アーカイブスのゲーム・タイトルを,パソコンからPSPに転送することも可能になる。PLAYSTATION StoreはPLAYSTATION 3用のオンライン・サービスで,PLAYSTATION 3用のゲーム・タイトルを体験版を含めて約30タイトル,ゲームの追加アイテムを約300種類,初代PlayStation用のタイトルを中心にする「ゲーム・アーカイブス」を100タイトル強,デモ動画を90タイトル強,提供している。

Wiiはライバルであると同時にパートナー

 基調講演の後には,ITpro発行人の浅見直樹による質疑応答セッションが行われた。

 「PLAYSTATIN 3らしいゲームとはどのようなものか」という問いに対して平井社長は「映像のきれいさに目が行きがちだが,今のゲームは映像がきれいなのはもう所与(Given)となっている。それよりも,レース・ゲームなどで,自分の運転スタイルに対してコンピュータがどういう反応を行うのか,ロール・プレイング・ゲームなどで,背景に埋もれているゲーム・キャラクターが,それぞれAIに基づいてどういう行動をするか,そういったリアリズムをどれだけ実現できるかが,PLAYSTATION 3らしさを作るようになるだろう」と答えた。

 また「任天堂の『Wii』は,平井社長にとってどのような存在か」という質問に対しては,平井社長は「違うユーザー層を狙っているとはいえ,同じ業界の中で戦う良きライバルだと考えている。同時に,どのような業界も1社だけでは成立しない。日本のゲーム業界がここまで大きくなったのは,プラットフォーム・ホルダーが切磋琢磨(せっさたくま)した結果であり,そういった意味では,任天堂はパートナーでもある」と語った。