ソフトバンクテレコムやソフトバンクBB,KDDIなどの通信事業者7社は9月20日,光ファイバ共用技術の実証実験の結果を公表した。FTTHサービスを割安に提供することを狙った実証実験である。具体的には,複数事業者がPONを使って光ファイバを共用しても,うまく通信ができるかどうかを検証した。PONは,主に一般消費者向けのFTTHサービスで採用する光ファイバの分岐システムである。実証実験には,ほかにアッカ・ネットワークス,イー・アクセス,TOKAI, ビック東海が参加。

 共同実験を実施した7社は検証の結果,PONを複数事業者で共用しても,ユーザーごとに上り/下りのトラフィックのQoS(quality of service)などの制御が可能であることを確認。インターネット接続の利用において,ほかのユーザーに影響を与えない(ヘビー・ユーザーのトラフィックが他ユーザーに影響を与えない)と結論付けている。さらに映像配信などで使うマルチキャストのトラフィックも帯域保障は可能であるという。

 実証実験では,分岐した光ファイバを集約するOLTと呼ばれる装置の網側に「事業者振り分け用スイッチ」(スイッチ)を設置した。8分岐した光ファイバそれぞれに異なる事業者のユーザーを接続していることを想定。上り通信の場合,それぞれのユーザー宅からの複数事業者のトラフィックを,このスイッチが識別し,各社のバックボーンへと転送する仕組み。実験で利用したOLTとスイッチは,帯域保証機能を持つ。

 この共同実験の背景には,NTT東日本/NTT西日本が他事業者に貸し出しているPONの貸し出しルールを巡る議論がある。現行のNTT東西のPONは,電柱上のスプリッタで分岐した光ファイバを最小8分岐単位一括で貸し出している。しかしこの場合,収容ユーザーが少ない場合に割高となる。そのため,NTT東西以外の事業者は8分岐一括の光ファイバ貸し出し方式ではなく,1分岐単位のバラ貸しを求めている。

NTT東西へルール変更を迫る

 ソフトバンクやKDDIなどは,分岐した光ファイバを複数事業者で共用しても技術的に問題ないことを示し,NTT東西に光ファイバの貸し出しルールの変更を迫ることをもくろむ。仮にこの貸し出し形態が実現し,PONのユーザー収容率を高められれば,ソフトバンクテレコムの試算では1ユーザー当たりの光ファイバ接続料を2000円以下にできる計算だという。

 共同実験を実施した7社は今後,NTT東西を含む実証実験や,NTT東西の設備を使った検証,1ユーザー単位の光ファイバ接続料の設定などについて,NTT東西と協議を進めていく予定だ。

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