日本法人の社長就任後、初めての講演ということで、大勢のゲーム業界関係者と報道関係者が詰め掛けた
日本法人の社長就任後、初めての講演ということで、大勢のゲーム業界関係者と報道関係者が詰め掛けた
[画像のクリックで拡大表示]

 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の平井一夫 代表取締役社長 兼 グループCEOは9月20日、「東京ゲームショウ2007」の基調講演で、同社が協力している米スタンフォード大学の「Folding@home」プロジェクトの最新状況を報告した。

 Folding@homeは、人間のタンパク質の折りたたみ現象を研究し、関連する疾病を理解することを目的とした、分散コンピューティングの世界規模の実験である。タンパク質の折りたたみ現象は非常に複雑であるため,そのシミュレーションには1台のコンピュータで最大30年かかるほどの計算力が必要とされる。Folding@homeでは,ネットワーク経由で参加する端末に計算を分担させることにしているが、SCEは「PLAYSTATION 3(PS3)」のユーザーに対して、同プロジェクトへの参加を呼びかけていた。PS3の最新システム・ソフトウエアには、Folding@homeアイコンが表示され、同アイコンをクリックすることでFolding@homeネットワークに参加できる。
 平井社長によると、9月18日にスタンフォード大学から「Folding@home全体の演算能力が1ペタ(P)FLOPSを超えた」という報告を受けたという。平井社長は、1PFLOPSの能力が「100マス計算を毎秒1兆ページこなす能力に相当する」と解説した。

 ちなみに、世界で稼働中のスパコンの性能を集計した「TOP500プロジェクト」の最新ランキング(2007年6月発表)のトップは、米エネルギー省(DoE)に設置した米IBMの「Blue Gene/L」で、その演算能力は280.6テラ(T)FLOPSだった。Folding@homeでは、その4倍程度の能力を達成したことになる。

 平井社長は「1PFLOPSの演算能力のうち、8割がPS3の貢献」とした。Folding@homeに参加するパソコンの台数は、PS3の6倍あるといい、台数ベースではPS3は少数派となる。平井社長は「PS3のCPUであるCELLの圧倒的な演算能力を示す一例」と強くアピールした。今後は、Folding@homeのような分散コンピューティング環境が、PS3が目指すリアルタイム・エンターテインメントのバックボーンになるだろうとした。

 基調講演では、PS3による仮想空間サービス「Home」の開始時期を当初の2007年末から2008年に延期されることも明らかにした。これは、サービスの内容を充実させるためだという。先行するセカンドライフとの違いについて平井社長は「PS3という均一なプラットフォームの利用によるサービスの最適化や高い画質、SCEによるコンテンツの管理」を挙げた。