独SAPは9月19日(現地時間)、ERP(統合業務基幹システム)パッケージの新製品「SAP Business ByDesign」を発表した。対象は社員数が100~500人の中堅企業。SAP自身がホスティングを手がけ、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)として提供することが特徴だ。1ユーザー当たり月額149ドル(1ドル=115円換算で約1万7000円)で提供する。SAP Business ByDesignは、開発コード名「A1S」と呼ばれていた製品である(関連記事)。

 SAP Business ByDesignで提供するのは、会計、人事、CRM(顧客情報管理)、SCM(サプライチェーン・マネジメント)、プロジェクト管理、SRM(購買情報管理)、CPM(コーポレート・パフォーマンス・マネジメント)、コンプライアンス(法令順守)管理の8機能。ユーザー・インタフェースなどを含め「イチから開発したまったくの新製品」とヘニング・カガーマンCEO(最高経営責任者)は強調する。

 ただし動作基盤は、これまでのSAP製品と同様に、ミドルウエア群である「NetWeaver」を採用。大企業向けERPパッケージ「SAP ERP 6.0」と同様に「SOA(サービス指向アーキテクチャ)の考え方を取り入れ、各機能を柔軟に連携できる」(アプリケーション・プラットフォームの総責任者を務めるピーター・ゼンケ氏)。

 独SAPがSaaSとしてアプリケーションを本格的に提供するのは、SAP Business ByDesignが初めて。オンデマンド型でCRMソフトやSRMソフトを提供していたが、ホスティングに近いサービスだった。SAP Business ByDesignの提供形態にSaaSを選択した理由について、カガーマンCEOは「社員数500人以下の企業では、高度な知識を持ったシステム部員がいない場合が多い。加えて、成長途中の中堅企業にとって、統合型のビジネス・アプリケーションを導入するためのコスト負担は重い。こうした中堅企業の事情を考慮した」と説明した。

 独SAPにとってSAP Business ByDesignは、3つめの中堅中小企業向け製品になる。これまで提供していた2製品の1つは、社員数500~2500人の企業向けの「SAP All-in-One(A-One)」。大企業向けERPパッケージ「SAP ERP 6.0」をベースに、パラメータ設定や導入マニュアルといったテンプレートを組み合わせた製品だ。もう1製品は、社員数100人以下の企業を対象にしたERPパッケージ「SAP BusinessOne(B-One)」である。SAP Business ByDesignは「A-OneとB-Oneの中間層に向けた製品」(カガーマンCEO)だ。

 SAP Business ByDesignは米国、ドイツで一部の顧客に対し、19日から提供する。米独に加え、中国、フランス、英国でも年内に初期ユーザー企業に提供開始する計画だ。09年までの提供予定地域が発表されているが、日本での提供は未定である。

 料金は、フル機能が利用可能な月額149ドルのほかに、「勤怠」「受注確認」など限られた機能を利用できる月額54ドル(5ユーザーから)のメニューも用意する。カガーマンCEOは、「当社は企業向けアプリケーションで30年以上の経験がある。この経験を反映したSAP Bueiness ByDesignは、市場にあるSaaSとして提供されるアプリケーションの中でもっとも完成度の高い製品」と自信を見せた。

■変更履歴
「勤怠」「受注確認」など限られた機能を利用できるサービスの料金について、「月額5ドルも用意する」としていたのは、「月額54ドル(5ユーザーから)のメニューも用意する」の誤りでした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2007/09/20 12:15]