Penrynのダイを手にして見せるポール・オッテリーニ社長兼CEO
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Penrynを搭載したノート向けプラットフォーム「Montevina」をデモ
Penrynを搭載したノート向けプラットフォーム「Montevina」をデモ
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2008年に登場する新しいアーキテクチャーを採用するCPU「Nehalem」。ニーズに合わせて搭載する機能を変えることができる
2008年に登場する新しいアーキテクチャーを採用するCPU「Nehalem」。ニーズに合わせて搭載する機能を変えることができる
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「3週間前に完成ばかり」というNehalemの試作品をデモ。実物を公開したのは初めて
「3週間前に完成ばかり」というNehalemの試作品をデモ。実物を公開したのは初めて
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 2007年9月18日(米国時間)、米インテルが主催する開発者向け会議「Intel Developer Forum(IDF)」が始まった。初日、基調講演で登壇したのは米インテル社長兼CEOのポール・オッテリーニ氏。同氏は「先端から主流へ(Extreme to Mainstream)」というテーマで講演。モバイルやゲームといった当初は非常に小さいと考えられていたパソコンのマーケットが、どうして大きな市場になり得たのかを、同社のCPU技術の進歩を振り返りながら説明した。

 同氏は冒頭で、「イノベーションこそが我々の今日の世界を作って来た」と語り、その一つの形として2007年11月に投入する新しいCPU「Penryn(ペンリン、開発コード)」を取り上げた。Penrynは、45nmプロセスルールで製造する同社初のCPU。現在の主力製品Core 2シリーズのCPUをさらに発展させたもので、トランジスタ数はデュアルコアが4億1000万個、クアッドコアが8億2000万個。多くの新機能も盛り込んでいる。

 新機能の一つは、トランジスタに電流を出し入れするゲート部にHigh-k (高誘電率)と呼ぶ素材を使うこと。これまでは二酸化ケイ素を素材として使っていたが、回路の微細化でゲートの厚さが原子数個分というレベルになると、回路から漏れる電流が無視できない。結果、消費電力に大きな影響を及ぼす。そこで、新素材の導入に踏み切った。

 オッテリーニ氏によると、「新しい素材によって電流の漏れは10分の1に、そしてパフォーマンスは20%アップした」という。実際、集積度が上がったことで、Penrynにはよりサイズの大きいキャッシュメモリーを搭載できる。マルチメディア系の新しい命令セットも50個ほど追加し、動画などの処理能力を向上させた。

 45nmプロセスルールに移行することで、「通常のパソコンやサーバー製品だけでなく、低コストかつ超低電圧が必要なモバイル向けの製品や、ゲーム向けなどハイエンドまでも、このCPUで対応できる」(オッテリーニ氏)と汎用性の広さも訴えた。Penrynを搭載した製品は今年の11月12日からハイエンドのデスクトップやサーバー向けに出荷が開始され、2008年の第1四半期(1~3月)には15から20種類の製品を見ることができると順調な立ち上がりに自信を見せた。

2008年にはアーキテクチャーを刷新

 オッテリーニ氏は、2008年のCPUのロードマップについても言及した。2008年に登場するのは45nmプロセスルールで製造する「Nehalem(ネハレム、開発コード)」だ。

 Nehalemではアーキテクチャーを刷新。モジュラー方式で設計し、CPUの中に複数の機能を搭載できるようにする。演算部とメモリーだけでなく、グラフィックスやメモリーコントローラーといった、今までは別に実装する必要のあった部品までをも取り込める。

 これに伴い、CPUの柔軟な設計が可能になる。例えば、グラフィックスを搭載するCPUはメモリーの搭載量を減らし、コアの数を増やすといったニーズを反映できるのだ。講演では、3週間前に完成したばかりというNehalem試作品の動作デモを披露。開発が順調に進んでいることをアピールした。

 インテルは現在、CPUについて「tick-tock」と呼ぶ戦略を採っている。1年目はまず従来のアーキテクチャーをベースにシュリンク(チップサイズを縮小)した製品を提供し、その次の年に同じプロセスで新しいアーキテクチャーを投入していく戦略である。アーキテクチャーと製造プロセスを同時に更新するのではなく、1年ごとにアーキテクチャーと製造プロセスを進化させていく。PenrynとNahalemもこの方針を順守している。

 同社が重視するプラットフォーム戦略についても説明した。プラットフォームで、今後最も重要なのはモバイル向けの市場であること、そして現時点ではデスクトップの出荷量のほうが多いが、2年後にはそれが逆転することを指摘。このために、どこにでもつながるためのネットワーク、そしてサービスの重要性を訴えた。

 ネットワークについては、同社が推進している広帯域の無線通信技術「WiMAX」をチップセットに組み込み、それを2008年のノート向けプラットフォーム「Montevina(モンテビナ、開発コード)」に採用することを明らかにした。Montevinaは次のCentrinoプラットフォーム。CPUにはPenrynを搭載している。講演では、実際に動作しているところを見せた。

家電向けIAやモバイルデバイスも

 パソコンゲーム市場も、主流になりつつある分野の一つ。この分野では、ゲーム用途も想定したチップセット「X38」を2007年11月に投入することを明らかにした。X38はハイエンドパソコン向けのチップセットで、高速バス「PCI Express 2.0」に対応。チップセットの機能をユーティリティソフトでユーザーが設定変更できる機能を備える。

 また家電製品や携帯機器に、同社のIAアーキテクチャーを浸透させていく意気込みも見せた。

 講演の最後に、オッテリーニ氏は「数年前、パソコン市場はすでに成熟したといわれていた。しかし、技術や新しい製品があればまだチャンスはある。モバイル市場の伸び率やサーバー市場の広がりなどを見ると、私は6年前に比べ今の方が将来を楽観視している」と語り、講演を締めくくった。

 ここ数年、同社長の基調講演は、CPUの使われる分野をいかに広げていくかという点に比重が置かれていた。しかし、今回の基調講演は少し趣向が違った。技術を中核に据えた構成で、「インテルは技術で市場を引っ張っていく」という意志を強く感じさせる講演だった。