携帯電話事業を参入を計画しているアイピーモバイルは9月19日,筆頭株主の異動と経営体制の変更を発表した。アイピーモバイルの筆頭株主は米通信ベンチャーのネクストウェーブ・ワイヤレスだったが,同社が所有する全株式(発行済み株式の69.23%)を森トラストに譲渡することで合意した。また,18日付で代表取締役社長の杉村五男氏が代表権のない取締役会長となり,経営企画を担当していた竹内一斉氏が代表取締役社長に就任した。

 ネクストウェーブは,7月13日に森トラストから同社が保有するアイピーモバイルの全株式を買い取ることで合意(関連記事)。8月8日に森トラストはネクストウェーブに株式を譲渡した。しかし,ネクストウェーブは7月13日の合意事項である反対売買のオプションを行使し,本日付で森トラストに対して同条件での買い戻しを請求した。反対売買のオプションはいわゆる“クーリングオフ”のようなもので,ネクストウェーブによるアイピーモバイル買収は破談となったといえる。

 森トラストによると,近日中に株式の異動を行う予定だという。

森トラストは杉村氏などへ株式譲渡,アイピーモバイルは把握せず

 アイピーモバイルの発表以外に,森トラストも同様の発表をしている。ただし,森トラストの発表には,アイピーモバイルの発表にはなかった事項が含まれる。森トラストは,ネクストウェーブから買い戻した全株式をアイピーモバイルの一部経営陣に譲渡する契約を締結したと発表したのだ。

 森トラストの発表資料では,譲渡先を「杉村五男(アイピーモバイル取締役会長)他」としている。杉村氏以外の譲渡先については「杉村氏の指定する事業化の推進に積極的な関係者」(森トラスト)して,具体的な企業名,人名は公表しなかった。

 ところが,アイピーモバイルはこの事実を把握していなかったとしている。「現在,杉村氏との連絡が付いていない。連絡が付き次第,事業計画,人事などについて協議することになる」(アイピーモバイル)としている。

 ネクストウェーブから森トラストへの譲渡金額と,森トラストからアイピーモバイル一部経営陣への譲渡金額はともに非公表。なお,森トラストは,アイピーモバイル一部経営陣への譲渡では反対売買のオプションを付与していない。そのため,株式の譲渡が成立すれば,森トラストはアイピーモバイルの経営から完全に手を引くことになる。

 アイピーモバイルは2007年11月10日までにサービスを開始しなかった場合,周波数を総務省に返却することになる(関連記事)。残された時間は少ない。

[アイピーモバイルの発表資料へ(PDF)]
[森トラスト(パルコ)の発表資料へ(PDF)]