NTTデータらITベンダー9社は9月18日、ユーザーとベンダーが合意しながら画面設計を進める手法「発注者ビューガイドライン(画面編)」を公開した。作成に当たったのは、主としてNTTデータ、NEC、富士通、日立製作所、東芝ソリューション、構造計画研究所の6社。昨年4月に「実践的アプローチに基づく要求仕様の発注者ビュー検討会」を発足し、議論を重ねてきた。今回の成果は発注者ビュー検討会のWebサイトで無償公開する。

 ガイドラインはWebアプリケーション開発での利用を想定している。特徴は、6社が持ち寄った24個の事例から導き出した、発注者と受注者の認識のズレを防ぐための130以上の「コツ」を記載したこと。このコツに従えば、ベンダーの説明不足やユーザーの理解不足で生じるズレを防ぐことができそうだ。

 今回発表したガイドラインは3部からなる。「第1部 表現」では、設計書の書き方や設計書同士の食い違いを防ぐためのコツを記した。また、外部設計書として、画面一覧、画面遷移、画面レイアウト、画面遷移・レイアウト共通ルール、入出力項目、アクション明細の6つを規定した。

 「第2部 記述確認」では、設計書に書いた内容をチェックするためのリストを提供する。「第3部 レビュー」では、3段階に分けてユーザーとベンダーの合意を成熟させていくレビュー方法を勧めている。加えて、仕様書で使う用語をまとめた用語集も公開した。

 ガイドラインそのもののレビューには、東京証券取引所と、ITベンダーのAGSが参加した。

 6社が1年半を掛けて策定したガイドラインは、ユーザーとの合意を主眼にした点で、評価できるものだ。6社はそれぞれの開発標準に今回のガイドラインを組み込むことを表明しており、早ければ今年中、遅くとも来年春までには組み込みが終了する見込みだ。

 だが、ガイドラインを定着させる面で課題が残っている。発注者ビュー検討会は来年3月までの時限的な活動である。今回の画面ガイドラインを公開した後のブラッシュアップ作業も「余力が無く手が回らない状況」と関係者は明かす。検討会は来年4月以降、存続母体を情報処理推進機構(IPA)のソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC)のエンタプライズ事業 要求・設計開発技術研究部会に移そうと協議を始めているが、まだ結論は出ていない。

 発注者ビュー検討会は来年3月に向けて、記述と合意のガイドラインをあと2つ作成する計画だ。業務フロー関連の「システム振る舞い」と、データ関連の「データモデル」だ。作業量が増えるため、8月からTISと沖電気工業、日本ユニシスが発注者ビュー検討会に新たに加わった。