人間が投げるボールをロボットがキャッチ。写真は両手に備えたセンサーを使ってうまくボールをキャッチしたKinopy(小田利延氏 作成)
人間が投げるボールをロボットがキャッチ。写真は両手に備えたセンサーを使ってうまくボールをキャッチしたKinopy(小田利延氏 作成)
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折りたたみ式の羽をつけた黒かじろう
折りたたみ式の羽をつけた黒かじろう
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水道の蛇口を回転させる様子を見せたクロムキッド
水道の蛇口を回転させる様子を見せたクロムキッド
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うどんの生地を伸ばす動作を実演したリティ(Toin Phoenix 作成)
うどんの生地を伸ばす動作を実演したリティ(Toin Phoenix 作成)
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 2足歩行ロボットの格闘競技大会ROBO-ONEの第12回大会が2007年9月15~16日、香川県高松市の香川県県民ホールで開かれた。従来、同大会は首都圏のみで開催していたが、ロボットの楽しさを広く伝えるため、ここ数年は開催場所を地方に拡大している。四国初上陸となった今回も、全国各地から熱烈なロボットファンが集い、激しい戦いを繰り広げた。

 1日目の予選はロボットのデモンストレーション審査。参加者が自分のロボットの機能をステージ上で2分以内にアピールし、審査員が点数を付ける。予選に参加した78台の中で、上位24台が2日目の決勝に進める。今回の規定演技は「キャッチボールをする」「人の役に立つことをする」の2つ。両テーマを着実にこなした機体は高得点が得られる。

 参加者にとって大きなハードルとなったのが、今回初の規定演技となる「キャッチボール」。これまでは、腕はあっても、モノをつかむための手を備えていない機体が多かった。人間のようなキャッチボールを実現するには手を搭載して、飛んでくるボールを検知してボールをつかむという一連の制御が必要となる。

 これを実現するため、赤外線を使った距離センサーを搭載し、ボールが近づいたときに手を閉じるようにプログラミングする参加者が多かった。ただこの方法だと、ロボットがボールを認識できる位置に、人間がボールを確実に投げ入れる必要がある。「ロボットよりも、人間が投げるほうの精度が上がらなくて……」と苦労を語る参加者も見られた。

バッティングや走塁も

 ロボットにも人間にも精密さが必要となるキャッチボールの演技の中で、観客の目を引いたのはROBO-ONEの第10回大会で優勝したキングカイザー(マルファミリー作成)。おもちゃのグローブを左手に装着し、ボールを受け取ると、右手でボールをつかみ投げ返す。まるで人間のようなボールさばきを見せた。

 このロボットは、右手の内側に距離センサーを内蔵。グローブの後ろに右手を添えて、ボールが届いたことを検知しているという。さらに小型のバットを左手に持ってボールを打つ、牽制球をセンサーで検知して帰塁するという動きも見せ、将来的にはロボットを使って野球ができる時代が来るのでは、と予感させるデモ内容だった。

 ボールを的確に受け取るために、腕のほかに幅の広い羽を搭載するロボットも見られた。OmniZero.5(前田武志氏 作成)は、両腕と2本の羽を広げてボールを受け取り、サッカーのスローインのようにボールを投げ返す技を見せた。コウモリのような折りたたみ式の羽をつけた黒かじろう(ナベ☆ケン作成)も着実に羽でボールを受け取り、ボールを投げ返していた。

 ボールをつかむ演技のために人間のような5本の指を持つロボットも登場してきた。グーチョキパーの動きもできるクロムキッド(KUPAKUMA作成)は、手で水道の蛇口や車のハンドルを回転させる様子を見せた。

 「人の役に立つことをする」という演技では、掃除をする、楽器を弾く、医療の補助をするなどさまざまなアイデアが飛び出した。さぬきうどんで有名な香川県にちなんで、うどんを伸ばす演技をするロボットも多かった。

 予選の1位はキングカイザー、2位はOmniZero.5。3位にはロボットの頭部が風船になっており、両腕でつかんで取り外すと頭部が空中に舞い上がるという一発芸で会場を沸かせたタマ(A-Do Type11)(ゆうすけ&ヒロヒロイレブン作成)が入った。

 会場となった香川県は、ロボットに対する取り組みが盛んだ。地元の詫間電波工業高専がNHK主催のロボットコンテストで優秀な成績を収め、香川大学の工学部は窓や壁の掃除ロボット「Wall Walker」を開発している。地元の研究者やロボットファンは香川ヒューマノイドロボット研究会を結成し、2足歩行ロボット大会「RoboCountryIV」を開催している。こうした土壌があることに加えて、ROBO-ONE委員会の西村輝一代表が香川県出身であることも、ROBO-ONE開催が決まった理由のようだ。

バットでボールを打つ動作も見せたキングカイザー

羽を使ってボールを受け取ったOmniZero.5

 後編では、格闘競技による決勝戦の様子をお伝えする。