写真●日立製作所 RAIDシステム事業部 事業企画本部 製品企画部の島田朗伸部長
写真●日立製作所 RAIDシステム事業部 事業企画本部 製品企画部の島田朗伸部長
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 「複雑なボリューム容量設計は不要になる。未使用容量の有効利用が可能になるため,ストレージに対する投資も無駄なく最適化することができる」。日立製作所 RAIDシステム事業部 事業企画本部 製品企画部の島田朗伸部長(写真)は,9月14日に開催されたセミナー「仮想化最前線」で講演し,同社の新しいストレージ・ソリューションによるメリットをこう強調した。

 島田部長はまず,企業が現在抱えているストレージ・システムの問題点を指摘した。島田部長によると,ストレージ・システムの問題点は,最近特に多様化してきているという。画像や動画といった非構造型のデータが増えるなど,企業システムのデータ量は加速度的に増大し続けている。それに加えて,ストレージ・インフラの増加・複雑化への対応やデータ改ざん・漏えいの防止,災害対策なども重要な要素となってきた。そこで,「多様化する課題を解決するには,複雑なストレージの構成や機能を意識することなく運用できる柔軟なストレージ・システムが必要になる」(島田部長)。このような観点から,日立が今年5月に策定した新しいストレージ・ソリューション・コンセプトが「Services Oriented Storage Solutions」だという。

 この新コンセプトに基づいてリリースされた製品は,5月15日に発表された「Hitachi Universal Storage Platform V」(USP V)と,9月11日に発表された「Hitachi Universal Storage Platform VM」(USP VM)。USP VMはUSP Vに対するエントリ機種という位置付けになる。そして,この新コンセプトを支えるキー・テクノロジがストレージ仮想化技術「Hitachi Dynamic Provisioning」(HDP)である。

ホストは「仮想ボリューム」だけを認識,実データは「プール」に格納

 島田部長は,このHDPの仕組みを詳しく説明した。まず,複数のストレージ・デバイスから成る物理的な記憶容量は,大きな「プール」として管理する。一方,ストレージを使うホスト・システムに認識させるのは,容量を自由に設定できる「仮想ボリューム」だ。ホスト上の業務アプリケーションによって仮想ボリュームに書き込まれたデータは,実際にはプールで一括管理するという仕組みである。

 この仕組みのメリットは,「業務ごとのボリューム容量管理が不要になり,ストレージを効率的に活用できるようになること」(島田部長)。島田部長によると,通常,ストレージは3~4割程度しか使用されておらず,残りは余っていることが多いという。しかし,ある特定の業務のストレージ容量がひっ迫しても,これらの空き容量を使うことはできない。このため,結局は新しいHDDの追加が必要になる。これに対してHDPを使えば,「HDDの追加は全体的なプールの容量が不足した時点でよい。増設の無駄がなくなり,ストレージの投資コストを最適化できる」(島田部長)。

 また,仮想ボリュームの容量は,プールの物理的な合計容量と無関係に設定できるという。このため,プールの容量を拡大する際に,仮想ボリュームを変更する必要はない。「ホスト・システムに影響を与えずに,ストレージの容量拡大を実施できる」(島田部長)。

3年間でTCOが4割削減されるという試算も

 また島田部長は,同社のUSP Vを活用した場合のTCO(総所有コスト)試算例も紹介した。

 その試算例とは,米国のある企業が総容量866TBのストレージを3年間運用した場合のTCOを,あるコンサルティング会社に推定してもらった際の数値である。それによると,一般のストレージ製品を使った場合のTCOは1211万5000ドル(約14億5000万円)。一方,USP Vを使った場合は739万5000ドル(約8億9000万円)。USP Vの方が約40%も低かったという。ここでいうTCOには,ストレージの購入コストからストレージ・ソフトウエア購入コスト,管理コスト,運用コスト,通信コスト,電力/空調コストまですべてを含んでいる。

 最後に島田部長は,「ストレージの仮想化は今後ますます重要になってくる。今後とも製品を充実していきたい」と述べ,講演を締めくくった。