第6回 北東アジアOSSカンファレンス会場
第6回 北東アジアOSSカンファレンス会場
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韓国OSS推進フォーラム 会長 KOH Kern氏
韓国OSS推進フォーラム 会長 KOH Kern氏
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日本OSS推進フォーラム 会長 桑原洋氏
日本OSS推進フォーラム 会長 桑原洋氏
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中国OSS推進フォーラム 会長 LU Shouqun氏
中国OSS推進フォーラム 会長 LU Shouqun氏
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 「日本でのオープンソース・ソフトウエア(OSS)振興は独占ソフトに対する選択肢を持つことを目的に始まったが,OSSの持つ産業創出力についても日中韓で協力していく」(日本OSS推進フォーラム 会長 桑原洋氏)---9月13日,韓国ソウルで第6回 北東アジアOSSフォーラムが開催された。同フォーラムは日本,中国,韓国の3国の産官によるオープンソース振興を目的とした会議である。

 これまでの会議ではオープンソース・ソフトウエア自体の普及や人材育成が課題として話し合われてきたが,韓国で2000台以上のLiunxサーバーを採用した学校向けの教育システムが稼働し(関連記事「オープンソース採用に突き進む韓国政府---第5回北東アジアOSS推進フォーラム全体会議より」),中国でも「世界での成長率を超える成長を示している」(中国OSS推進フォーラム 会長 LU Shouqun氏)と,オープンソース・ソフトウエアは既に標準プラットフォームになってきている。日本でも「2007年7月から『情報システムに係る政府調達の基本指針』が実施され,オープンな標準に基づ. く要求要件の記載をが優先されるようになったことでOSSの採用が促進されるのではないか」(情報通信政策局 官房審議官 松井哲夫氏)。このように一定の成功を収めたことを受けて,今回の会議では「SaaSでのOSS活用について連携を深めることについて合意した」(経済産業省 商務情報政策局長 岡田秀一氏)。

 今回ホスト国である韓国は「OSS World is FLAT」というキャッチフレーズを採用した。基調講演で,韓国の産官学が設立したオープンソース推進団体「韓国OSS推進フォーラム」の会長KOH Kern氏は「かつて電気が発明されてから,革命が起きるまでに数十年,100年かかった。革命が起きるまでには多くのモーターや電気機器が発明され,人々の考えが変わり,家が,ビルが,都市がデザインし直されなければならなかった。同じように,インターネット革命はまだ始まりに過ぎない」と語り,オープンソースを基盤とする新しい産業振興への期待を語った。

 日本OSS推進フォーラム 会長 桑原洋氏はITproの取材に対し,「OSSが持つコミュニティなどの素晴らしい点を産業創出へ生かしていく。具体的には日中韓でタスクフォースやワーキンググループを作るということになっていくだろう。SaaSが流行ったからSaaSと,常にアメリカの後追いでいいのか。いろいろなアイデアを議論していかなければならない」と語った。

 昨年,福岡で開催された際,中韓で「デスクトップLinuxの仕様である中国のRPLinuxと韓国のBooyoをベースに共通仕様を作成する」(関連記事)とされていた“統一Linux”についてはトーンダウンし,RPLinuxや共通仕様という言葉はほとんど聞かれなかった。デスクトップLinuxが市場としてはまだ広がっておらず,独自仕様を作ることのメリットの少なさあるいはデメリットが認識されたためと思われる。

 一方で3国によるLinuxサーバーの信頼性強化のための共同開発は着実に進展していることが報告された。3国は合宿による共同開発など行い,Linuxカーネルのバージョン間のシステム・コール互換性検証のためのテスト・ツールcrackerjackは既にベータ版が公開されており,Linuxサーバーのリソースを管理するツール「OpenDRIM(オープンドリーム」は9月か10月に正式公開される見込みだ。「今後はセキュアOSにも取り組んでいく」(北東アジアOSS推進フォーラム ワーキンググループ1 サーバー部会 鈴木友峰氏)。