インターネットイニシアティブ(IIJ)の子会社であるGDX Japanは、企業向けのメール送受信基盤サービス「GDX トラステッドプラットフォーム」の提供を2007年11月に開始する。インターネット上に独自に開発したメール送受信基盤を構築し、それを企業向けにサービスとして提供するものである。利用企業間同士で,メールの到達確認やトラッキング,暗号化などを実現し,安全にメールを利用できるようにする。
「メールは、機密情報のやり取りなど重要な業務に利用されているにもかかわらず、安全性や信頼性は低いまま。送信企業に非がなくてもスパム対策などによってメールの受信を拒否されるケースもある」と、GDX Japanの近藤学取締役は指摘する(写真)。「一方で、スパム(迷惑メール)やウイルス・メールが減ることもない。負のループに陥っている」。
GDX Japanの狙いはメール送受信の仕組みを、現在の「不特定多数とのやり取り」から、「特定多数との確実なやり取り」に置き換えることにあるという。GDX Japanが開発したメール送受信基盤を企業向けに提供し、その企業間であれば、安全・確実にメールをやり取りできるようにする。
具体的には、従来のメール送受信で使うプロトコルSMTPではなく,HTTPを使ってXMLデータをやり取りする方式を採用した。企業のLANに設置した「GDX Edge」と呼ぶ通信機器が、メールを送信しようとするSMTPのデータをHTTPに変換し、暗号化した上で送受信する仕組みである。ユーザー企業はメール・サーバーやメール・ソフトを入れ替える必要はない。ただし、メールの送信先企業にもGDX Edgeは必要だ。
もし送信先企業がGDX Japanのサービスを利用していない場合は、従来通りSMTPを使ってメールを送受信する。送信先の企業がGDXのユーザーかどうかをチェックするのは、GDX Edge。その上で、HTTPに変換するか、SMTPのままインターネット向けに送信するかを決める機能を備える。
GDX Edgeに保存されている送受信記録は、GDX Japanのサーバーが収集。同社のポータルサイト経由で、到達確認やメール状況の統計などを閲覧できるようにする。現在開発中の、メール・ソフト用プラグインを使うと、メール・ソフト上で送信したメールの到達状況などを確認できるようになるという。
また、特定の企業だけが利用するサービスであるため、スパムやウイルス・メールが入り込む可能性が低いのも利点である。
サービス料金は,体系も含めて未定。「1メール・アカウントあたり数百円程度のイメージ」(近藤氏)だという。2008年度末までに、金融機関などを中心に約300社の利用を見込む。GDX Japanは、IIJと米GDXネットワークが出資して設立された。米GDXネットワークは、2008年にも北米で同様のサービスを開始する予定である。さらにGDXジャパンを共同で、欧州,オーストラリア、中国などでもサービス提供を計画している。