元米国政府サイバー・セキュリティ顧問のHoward Schmidt氏は米国時間9月11日,緊急通報の一次応答者を支援する団体組織「Tiers of Trust」の設立を発表した。この団体は,国家および地域の緊急事態の対応に関連のある警察,消防署,レスキュー隊,医療機関や民間企業の支援を目的としたもの。これらの組織が2001年9月11日に起きた同時多発テロと2005年に米国南部を襲った大型ハリケーン「カトリーナ」の緊急救援活動で経験した問題点の解消に取り組む。

 過去の危機的状況で発生した問題のいくつかは,一次応答者の識別情報に関連するものだった。同時多発テロ攻撃の際には,当局がニューヨークの現場に出入りした隊員を把握できなかったため,300人以上の隊員が行方不明となった。ワシントンDCでは,救援に駆けつけた職員の識別情報と権限が確認できなかったため,米国防総省への立ち入りが拒否された。一方,カトリーナによる被害からの復旧活動では,医療従事者の数百人が資格の保有を証明できなかったために効果的に配置されなかったという。

 これらの問題を解消するために,国土安全保障に関する大統領令「Homeland Security Presidential Directive 12(HSPD-12)」および連邦政府情報処理規格「Federal Information Processing Standard(FIPS 201)」が発表され,連邦職員と請負業者の身元を確認するための新しい要件が定められた。Schmidt氏は,「この規則はいくつもの意義のある目的を実現するが,一次応答者グループ内における予算の問題により実装が困難になっている」と指摘している。

 Tiers of Trustは,一次応答者グループがわずかな費用で連邦の定める要件を満たせるように支援することを目標としている。具体的には,登録した一次応答者グループに対して,非接触型のスマート・カード向けにFIPS 201の連邦政府機関のスマート・カード番号「FASC-N(Federal Agency Smart Card Number)」,カード保有者番号「CHUID(Card Holder Unique Identifier)」,「使用期限」といった識別情報を作成するソフトウエアを無料で提供する。

 このほかにも,米HID,米Secure Network Systems(SNS),米PGPといったメンバー企業は,登録グループに対してFIPS 201に準拠するスマート・カードの作成や管理を可能にするリーダーやライター,暗号化ソフトウエアといった技術を割引価格で提供する。

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