図:一般的な印刷技術(上)とナノ印刷技術(下)の模式図(IBMプレスリリースより)
図:一般的な印刷技術(上)とナノ印刷技術(下)の模式図(IBMプレスリリースより)
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 米IBMとスイスのチューリッヒ工科大学(ETH Zurich)は,ナノ・サイズの微小粒子を正確に配置できる“ナノ印刷技術”を開発した。IBMがスイスで現地時間9月11日に明らかにしたもの。詳細は英国の科学雑誌「Nature Nanotechnology」(9月号)に掲載する。

 これまで小さな粒子で微細な構造を作るには,大きな素材から削り出す手法を用いることが一般的だったという。これに対しナノ印刷技術は,ナノ・サイズの微小粒子を印刷するように配置するので,非常に効率よく微細構造を作れる(図1)。さらに,配置する物質と配置先の物質の素材を変えることもできる。

 IBMとチューリッヒ工科大学の研究者は,直径約60nmの金(Au)粒子約2万個を微細な溝に入れて細かい線上の構造を作り,これをほかの物質に転写することで絵を描いた。Au粒子の配置精度は,自己組織化という現象を利用することで粒子の直径と同程度とした。印刷解像度で表すと10万dpiに相当するという。

 IBMらは「ナノ印刷技術は効率が高く低コストであり,量産に適用可能で,直径2nm程度の粒子の配置も行える」と見込む。同技術で製造できる対象物としては,ナノ・スケールのバイオ・センサー,光学チップ内に組み込み可能な微細レンズ,ナノ・サイズのLSI配線を挙げた。

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