ドワンゴ 戀塚昭彦氏
ドワンゴ 戀塚昭彦氏
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 「(2006年)10月後半のとある金曜日に,川上(量生ドワンゴ会長)から『動画の上にカラフルなコメントがランダムに流れている』システムを見せられて『こういうものを作らないか?』と言われて,翌週の水曜日にはだいたい出来上がった」--9月7日開催されたイベント「ITpro Challenge!」で,「ニコニコ動画」の開発者であるドワンゴの戀塚昭彦氏は,こんな逸話を披露した。

 ドワンゴが2006年12月に運営を開始した「ニコニコ動画」は当初,「YouTube」などの他社のサービスの動画の上にコメントを表示させるというシステムだった。その後,YouTubeの動画が使えなくなったことから,自社でも動画投稿/配信システムを構築するようになって今日の状態に至っている。今回講演を行った戀塚氏は,YouTubeの動画を使っていた初期のニコニコ動画を,事実上1人で作り上げたという人物だ。

「ありえない速さ」で開発

 戀塚氏がニコニコ動画に関わるようになったのは,冒頭の発言にある通り2006年10月後半のこと。同社の「ニコニコ動画開発者ブログ」によれば,企画自体は8月頃より始まっており,戀塚氏は10月後半に同社会長の川上氏から,UEI(UBIQUITOUS ENTERTAINMENT)の布留川英一が作成した「動画の上にカラフルなコメントがランダムに表示される」というデモを見せられて,「こういうシステムが欲しいので,作らないか」と持ちかけられたという。

 UEIのシステムを見せられた戀塚氏は,「動画を見ながら会話をするのは,自分の好きな2ちゃんねるの『実況板』(テレビの放送に合わせてユーザーがリアルタイムで書き込みを行う掲示板)みたいだと思った。動画にコメントを貼り付けるシステムであれば,祭りの時間(盛り上がっている時間)に居合わせなくても参加できると思ったので,すぐにやろうと思った」と,開発の動機を語る。

 川上氏に開発スケジュールを聞いたところ「締め切りは設けない。ありえない速さで開発することを求めている。来週には動いているよね?」と言われたので,翌週の水曜日に出来上がったのが,ニコニコ動画だったという。その後,UEIのエンジニアと引継ぎのための打ち合わせをしたが,「何も引き継ぐものがないと言った」と戀塚氏は振り返る。当初のニコニコ動画は,実質3営業日でゼロから開発されたと言える。

 もっとも,戀塚氏がニコニコ動画を3日で開発できたのには訳があった。