写真1●稚内北星学園大学東京サテライト校の浅海智晴教授
写真1●稚内北星学園大学東京サテライト校の浅海智晴教授
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写真2●アーキテクタスの細川努代表取締役
写真2●アーキテクタスの細川努代表取締役
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 9月7日に開催されたソフトウエア開発者向けイベントの「X-over Development Conference 2007」のセッションで、稚内北星学園大学東京サテライト校の浅海智晴教授(写真1)とアーキテクタスの細川努代表取締役(写真2)がITアーキテクトについて議論を交わした。浅海教授は、「これからのITアーキテクトは、ビジネスの仕組みやエンジニアの立場など全体のアーキテクチャを、新しい時代に向けて整理していかなければならない」と結んだ。

 対談ではまず、ITの変化について話が進んだ。細川代表が、「世界のフラット化が進んでいるのにITが大きな役割を果たしている。また、ビジネスとITの関係が変わってきている」と発言。続けて「各部門がビジネスの機能を部品化しサービス化することで、部門や企業間でサービスのシェアリング、オンデマンド化が進む」と、ビジネスとITの変革について言及した。

 これに対し、浅海教授は、「こうしたシェアリングや部品化の話は、なかなか実感できるところにきていない」と現実性を尋ねた。回答として細川代表は、「日本の企業はITを除けば優秀だが、ことITにかけては歯車がかみ合っていない。IT投資意欲が低く、費用が保守にしか回っていない」と日本での遅れを言及した。

 次いで、浅海教授は、「Webはインフラとして色々なビジネスの観点で使われる気配がある。これまでOSやミドルウエア、Javaという技術の変化はメインフレーム時代と実はそう変わらなかったが、Webは大きな変化の予感がある」と、既存ビジネスの枠組みを超える期待を述べた。これに細川代表も、「企業内にしかなかったアプリケーションがネットワークを越えてくるという違いは大きい。関係する取引先や一般消費者との関係が進化する。しかしこれが最終形ではなく、Ajaxや情報家電など様々な技術と相まって進化が進むだろう」と相槌を打った。

 ただこうしたシステムを設計していくには、「既存の方法論では限界があるのでは」と浅海教授は述べる。細川代表は、「SOA(サービス指向アーキテクチャ)のような技術がビジネスの進化にどうつながるのか結び付けられる方法論が重要になる。モデリングの重要性が増すし、ビジネス目的をしっかり理解しなければSOAの価値は出ない」とする。

 こうしたITアーキテクトの人材供給も難しいとする。細川氏は「人材の供給は過渡期にある。日本は米国と顕著な違いがある。米国は企業が数千人の技術者を抱えて自社開発する。日本は数十人が中心で、ベンダーに丸投げするケースが多い。丸投げされるとベンダーはリスク負うのでチャレンジできない。技術者がユーザーのために役に立つという考えでチャレンジしていかないといけない」と述べた。