マイクロソフトの樋口泰行代表執行役兼COOは、2007年9月7日に開催した「MCPC モバイルソリューションフェア2007」にて、携帯情報端末向けのOS「Windows Mobile」を主軸とした同社のモバイル戦略について講演した。樋口氏は同社が2月に発表した最新バージョンの「Windows Mobile 6.0」の新機能がスマートフォン市場の起爆剤となり、特にスマートフォンを一括導入する企業が増えるとの見方を示した。
国内では、携帯電話に比べるとスマートフォンは普及していない。樋口氏は民間調査会社の米ガートナーの調査を引用し、63.7%の企業が「情報漏洩(ろうえい)のリスク要因の増加」を懸念してスマートフォンの導入に二の足を踏んでいると指摘した。Windows Mobile 6.0には、マイクロソフト製の各種サーバーソフトとスマートフォンを連携させる機能を盛り込み、いくつかのセキュリティ対策を施した。これにより企業導入の阻害要因は取り除かれたとしている。例えば、Windows Mobile 6.0の搭載端末なら、紛失した場合でも、サーバー側から遠隔操作で端末をリセットでき、端末内に保存された個人情報の流出を未然に防ぐ工夫がある。
Windows Mobile 6.0端末を企業が購入した事例として、樋口氏はユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)とINAXメンテナンスを紹介した。「導入前、USJの社員は電子メールの処理に業務時間の25%も割いていたが、スマートフォンを導入後、電子メールの読み書きを移動中に済ませることができ、業務効率が上がった」(樋口氏)。INAXメンテナンスも、顧客先を訪問する600人のカスタマーエンジニアにスマートフォンを貸与。顧客先での作業効率を大幅に向上させた。
Windows Mobile端末は出荷台数が国内で100万台を突破し、2007年に入ってからだけで6機種が発売された。樋口氏はスマートフォンが普及する土壌は整いつつあるとしながらも、スマートフォンの本格的普及には企業文化の違いを乗り越える必要があるとした。
例えば、基幹業務を合理化する取り組みは日米に差がないのに対し、決裁権限を現場近くにしたり、管理業務を集約したり、社内の情報伝達の階層を減らすなどの取り組みは、米国に比べて日本が遅れているとする。その理由は、「日本企業では既存のワークスタイルを崩さずに新しい技術を仕事に取り入れるが、米国企業は新しい技術にワークスタイルを合わせる」(樋口氏)。こうした日米の違いを乗り越えるアプリケーションの開発などが、スマートフォン本格普及の鍵を握るとし、今後パートナー企業との連携を加速させたいとした。