リクルート メディアテクノロジーラボの川崎 有亮氏
リクルート メディアテクノロジーラボの川崎 有亮氏
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 「マッシュアップはほかよりも早く始めることが大事。この講演をお聞きになった開発者の方は,この週末にマッシュアップで何か作ってみてください。企業の担当者の方は週明けにもWebサービスAPI提供の検討を開始してください」--。9月7日のコンファレンス「X-over Development Conference 2007」において,「Webサービス・ビジネス×マッシュアップ」という演題で講演したリクルート メディアテクノロジーラボの川崎 有亮氏はこのように呼びかけた。

 川崎氏は最初に「マッシュアップとは,複数のWebサービスを組み合わせて“さくっ”と新たなサービスを作り出すこと」と説明し,Webサービス展開の5段階について順に解説した。

 第1段階は,企業データをWebサービスとして“出す”こと。川崎氏は「ProgrammableWeb」というWebサイトに登録しているマッシュアップ・サイトが世界中で2291(9月5日現在),登録されているWeb APIが509(同)あり,増え続けていると指摘。また,Webサービス・データ方式の変遷について触れ,初期のころはXML+RPC,SOAPがメインだったが,最近はREST+XML over HTTPが主流だと述べた。ほかにAjaxと親和性が高いJSONやJSONPなどが現在使われているが,「どの方式にするか悩むくらいだったら,REST+XML over HTTPを選んで早く提供することが大事」(川崎氏)と語る。

 第2段階はAPIの存在を“知らせる”こと。出したデータをサードパーティが使ってくれなければ意味がないからだ。ここではマッシュアップによるアプリケーション開発コンテストをいくつか紹介した。そのなかで,川崎氏が所属するリクルートが開催しているコンテスト「Mash up Award」(第3回)にも触れ,「(週明けの)9月10日が締め切りです。いつも締め切り間際の2日間に8割の作品が来ます。賞金もありますのでぜひ」などと語り,会場を沸かせた。

 第3段階は多くの開発者に“広める”こと。そしてその手段の一つとして,公開したWebサービスを利用するために各言語対応のライブラリを提供し,開発者がもっと間単に利用できるようにすることを挙げた。こうしたライブラリをWebサービスの提供企業だけで作成するのは限界があるので,オープンソースのようにコミュニティなどに協力してもらうことも必要だろうとした。

 デザイナやWebサイト制作者などプログラミングの知識がない人が,「ブログのパーツ感覚で手軽に使える」ようなツールも重要だとし,自身のサイトで公開している,郵便番号を入力するとボタンなどを押さなくても自動的に住所に変換してくれるツール「AjaxZip」を紹介した。

 展開の第4段階として,様々な利用者に“届ける”ことを指摘し,そのためには対応プラットフォームの拡大が必要だとした。例として,海外の大学で始まったSNSである「Facebook」を挙げた。Facebookは6月時点で会員数が3400万人と,米国でMySpaceに次ぐ第2位のSNSである。これまでのSNSとの違いは,Facebookプラットフォーム上で自作のアプリケーションを稼働させられること。そのため,次世代の「ソーシャルOS」などと呼ばれているという。

 SNSの知り合いの口コミ伝播(でんぱ)でアプリケーションをインストールしていくことにより利用者が便利になる。同時に,Facebookのアプリケーションが充実することによりFacebookの価値が増大するという双方にメリットがあるとした。また,パーソナライズド・ポータルサイト「iGoogle」の「Google Universal Gadget」についても触れた。

 第5段階はサービスを“使ってもらう”ことだとし,キラーアプリケーションの出現に向けて,Web APIの利用者,開発者,提供企業,それぞれのメリットとリスクを列挙した。利用者にとっては,様々なサービスを使える半面,そのサービスを信用できるのか,フィッシングの可能性はないのか,といったリスクがあることを指摘した。

 開発者のメリットは,個人では利用できなかったデータを無料で調達してアイデアを生かしたサービスを提供できること。しかし,リスクとして,利用しているWebサービスがいきなり終了する可能性があるとした。

 最後に,提供企業にとってにメリットとリスクに触れた。新しいアイデアをサードパーティなどが提供してくれる可能性がある半面,どんなサイトで使われるかわからないことや,基幹システムに接続させることにより攻撃や過負荷になるリスクがある。