米Microsoftは,オフィス・アプリケーション向け文書フォーマット「Open XML」の国際標準化機構(ISO)標準化に向けたファスト・トラック投票で,標準化作業の第1段階における大打撃の影響から敗北した。これでMicrosoftは,2008年初頭の標準化を目指して仕様を再提出する前に,膨大な苦情と否定的意見に対処しなければならなくなった(関連記事:MicrosoftのOpen XML仕様,ISOの投票で承認得られず採用見送り)。

 Microsoftのこうした出来事に対する反応は,欠陥品をなんとか活用しようというPR活動そのものだ。投票で破れたことを認める代わりに,Open XMLが「多くの強力な支持を得た」ことばかり示そうとしている。Microsoftのプレスリリースには「ISOメンバー(87人のうち)51人,つまり有効票全体の74%が,Open XML承認に支持を表明した」とある。

 ただし,Microsoftの示した数字は一部事実を隠している。ISOの標準化プロセスにおいて,メンバー国に与えられた1票の重みは異なる。標準化の提案には,対象仕様に関与した国の標準化組織である「Pメンバー」の3分の2から賛成票を獲得すると同時に,「Oメンバー」と呼ばれる全有権者の4分の3から賛成を取り付けなければならない。Microsoftはいずれの条件も満たせなかった。

 投票で負けたという事実と,国際的なオフィス・アプリケーション向け文書フォーマット標準を定義しようとするMicrosoftの立場が競合仕様であるOpenDocument Format(ODF)に奪われかねない状況から,Microsoftは2008年2月終わりの最終投票会議に臨むこととなった。さらにMicrosoftは,これから最終投票までのあいだに,今回の予備段階の投票に参加したISOメンバーから寄せられた苦情と否定的意見に回答する必要もある。プレスリリースで「仕様の改良につながる極めて貴重な技術的コメント」に感謝の意を示しているので,回答作業は問題にならないはずだ。ところで,コメントのなかには文章が数百ページあるものも存在する。

 Microsoftはこの件を好きなように取り繕えるが,事実は明白だ。大きな規模で,ときには不正なロビー活動を展開したにもかかわらず,Open XMLは必要としていた全世界からの支持を得ることに失敗し,傍流仕様に落ちぶれる可能性が高まった。失敗の理由が仕様の技術的問題(これは考えにくい)にあるのか,それともMicrosoft自体とそのビジネス習慣に対する世界的な不信(これは非常にあり得る)にあるのかは,議論の対象となる。ただし現時点で公になっている情報は,当記事にすべて書いた。