写真●左からWiMAXフォーラムのボード・メンバー兼マーケティング副代表を務めるイスラエルのアルバリオンのモハンマド・シャクリ戦略担当副社長,WiMAXフォーラム日本オフィス副代表(企画担当)を務めるインテル 研究開発本部の庄納崇・主幹研究員,WiMAXフォーラム日本オフィス代表を務める東京大学の齊藤忠夫・名誉教授
写真●左からWiMAXフォーラムのボード・メンバー兼マーケティング副代表を務めるイスラエルのアルバリオンのモハンマド・シャクリ戦略担当副社長,WiMAXフォーラム日本オフィス副代表(企画担当)を務めるインテル 研究開発本部の庄納崇・主幹研究員,WiMAXフォーラム日本オフィス代表を務める東京大学の齊藤忠夫・名誉教授
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 WiMAXの普及促進や製品の相互接続検証を実施する業界団体「WiMAXフォーラム」の日本オフィスは9月3日,国内での取り組みについて説明会を開催した。日本オフィスの設置は6月21日に発表済み(関連記事)。

 ゲスト・スピーカーとして冒頭に登場したインテルの吉田和正・代表取締役共同社長は「我々は2002年からWiMAXに本格的に取り組み,標準化や世界各地の周波数獲得活動に協力してきた。日本はブロードバンド立国で,無線ブロードバンドでも先進国でなければならない。今やWi-Fiは当たり前のように普及し,ユーザーの利便性向上に貢献してきた。今度はWiMAXで長距離化を進めるのがインテルの使命と考え,WiMAXフォーラム日本オフィスを支援している。半導体やソフトウエアの提供にも力を入れていく」とWiMAXに対して積極的に取り組んでいくことをアピールした。

 WiMAXフォーラムのボード・メンバーで,マーケティング副代表を担当するイスラエルのアルバリオンのモハンマド・シャクリ戦略担当副社長(写真)は「事業者のインターネット接続の収益はまだまだ小さく,WiMAXのエコシステム(生態系)でいかに利益を上げていくかが重要。WiMAXはオープンなアプリケーションとデバイス環境を提供することで,今後のモバイル・インターネットに求められる価格面やトラフィック面,ビジネスモデル面の要件を満たせる」とWiMAXの優位点を強調した。WiMAXは先進国をはじめ多くの国が活用を検討しており,ユーザーは今後4~5年で5000万~6000万人以上に増えると予想されているという。「利用する周波数も2.5GHz帯や3.5GHz帯だけでなく,将来は700MHz帯が追加されるだろう。数年後にはIEEE802.16mが標準化され,通信速度も170Mビット/秒またはそれ以上になる」(同)。

 WiMAXフォーラムは現在,通信事業者やメーカーなど491社が参加している。KDDIと富士通が15社のボード・メンバーに入っており,両社を含めた日本の参加企業は約30社になる。日本オフィスでは規制や技術面の課題と解決策をまとめる「テクニカル&レギュラトリーWG」と,アプリケーションの提案やマーケティング全般を担当する「アプリケーション&マーケティングWG」の二つのワーキング・グループを設置して活動を開始したという。「全国バンドの枠の二つともモバイルWiMAXが割り当てられるようにマーケティング活動を積極的に展開していく」(WiMAXフォーラム日本オフィス副代表(企画担当)を務めるインテル 研究開発本部の庄納崇・主幹研究員)。

2.5GHz帯参入競争は「ソフトバンク+イー・アクセス陣営が有望」

 説明会の最後には,日本総合研究所 研究事業本部の新保豊理事・主席研究員(通信メディア・ハイテク戦略クラスター長)が「2.5GHz帯を巡る課題と将来展望」と題した講演を実施した。新保理事は2.5GHz帯に割り当て予定の二つの枠に対して,技術間競争を想定して次世代PHSとモバイルWiMAXを割り当てる可能性と,WiMAXだけを割り当てる可能性の両方があると説明。前者に決まった場合,次世代PHSが国際標準として広く普及する可能性は低いなどの理由から「将来に禍根を残す恐れがある」(同)とした。

 同氏は,WiMAXを推進する各陣営について「携帯電話上位2社に比べて割り当て帯域幅が少なく,いち早く提携に動いたソフトバンク+イー・アクセスの陣営はかなり有望」という見解を示した。また「これまでの競合関係から,KDDI陣営がソフトバンク+イー・アクセス陣営に接近する可能性もある」とする。さらに「すべてのプレイヤーを満足させるために,現在割り当てられている隣接帯域を開放し,NTTドコモ陣営やKDDI陣営に割り当てるウルトラCもある」といった考えを披露した。