写真1 大丸と松坂屋HDが経営統合して誕生したJ.フロント リテイリングの経営陣
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写真2 経営統合会見で握手する奥田務社長(左、大丸会長を兼務)と岡田邦彦会長(右、松坂屋HD会長を兼務)
写真2 経営統合会見で握手する奥田務社長(左、大丸会長を兼務)と岡田邦彦会長(右、松坂屋HD会長を兼務)
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 大丸と松坂屋ホールディングス(松坂屋HD)が9月3日に共同持ち株会社「J.フロント リテイリング」を設立し経営統合した。これに伴い、2008年9月に両社のマーチャンダイジング(MD)システムと顧客情報システムを統合する。

 大丸の情報システムに片寄せし、松坂屋HDが業務改革を進める環境を作り出すとともに、情報システムの保守運用費の削減も見込む。投資額は数十億円になる見込みで、両社の負担配分は現在検討中だ。

 大丸の山本良一社長は「初期投資額は検討中だが、コスト削減など大きなシステム統合効果が見込める」と話す。具体的には、今年度下期(2007年9月)から商品分類のコード統一などシステム統合に向けた整備を進めていく予定だ。顧客情報システムを統合することによって、会員数は400万人を超える。


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大丸流の営業改革手法を松坂屋に移植

 システム刷新の狙いは、松坂屋HDの業務効率向上を目指すために大丸流の営業改革手法を移植することである。松坂屋HDは、2007年2月期の売上高営業利益率が2.1%だったが、2010年度には4.7%を目指している。4.7%実現の鍵を握るのが、松坂屋HDに移植される大丸の営業改革の手法。J.フロント リテイリングは、来期から3年間で100億円の販売管理費を削減する考えであり、人員削減を実施せず営業改革などによって達成を見込んでいる。

 大丸が取り組んだ営業改革のポイントは、顧客満足度を最大化させるために社員の業務を再設計したことである。その結果、正社員は高度な販売業務と優良顧客の流出防止に集中できるようになった。そして、この改革を下支えしたのが、2002年に構築したシステム。各店舗の売り上げ状況を即座に把握できる業務支援システム「MD情報システム」と、大丸が発行するポイントカードなどで購入した顧客の購買履歴を販売員が見られる「D-CIS」という顧客情報検索システムなどだ。これらの仕組みを活用できるように松坂屋HD側が大丸へシステムを片寄せするという。

 会見の席上、山本社長はシステム統合によって保守運用費を削減できるほかに、大丸流の業務プロセスを移植できると話した。具体的には、両システムの統合により、各売り場における日々の売れ方を正確に把握するとともに、顧客の購買動向をMD計画に早く盛り込めることを挙げた。

 「400万人を超える会員の情報を分析することでCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)に磨きをかけていきたい」と、山本社長は意気込む。精ちな売り上げ管理ができるようになることで、大丸が現在取り組んでいるように販売員ごとの売り上げ実績を明確にしたり、目標とするコスト削減の達成状況を示したりできるようになるという。

大丸のモデルを手掛かりに、3年間で営業利益率の倍増狙う松坂屋

 松坂屋HDが営業利益率を倍増させるのに与えられた時間は3年間と短いため、果たして達成できるのか、懸念する声もある。大丸の2006年度の営業利益率は4.4%(単体)だが、改革前の1998年度は1%未満だった。つまり松坂屋HDは、大丸が9年かけて取り組んできた改革を3年で取り組むことになる。

 短期間での取り組みになることについて山本社長は「自分たちが営業改革に取り組んだ時にはモデルがなかったため時間がかかった。今回は大丸というモデルがある」と自信をみせる。システムだけでなく、人材も送り込みノウハウを移植する。大丸の営業改革と外商改革の担当者9人が9月3日付で出向し、モデル店となっている名古屋本店(名古屋市)と上野店(東京・台東)で改革に取り組んでいく予定だ。