写真1●銅の表面に配置した鉄の磁気異方性のイメージ
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写真2●単一分子による論理ゲートの3次元イメージ
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 米IBMが米国とスイスで現地時間8月30日,原子/分子サイズ・デバイス実現に向けた2件の基礎的な研究成果を発表した。詳細は米国の科学雑誌「Science」(8月31日号)に掲載する。

 1件目の研究成果は,世界で初めて単一原子の磁気異方性の計測に成功したこと。IBMは走査型トンネル顕微鏡(STM)を使って銅(Cu)の表面に複数の鉄(Fe)原子を正確に配置し,各Fe原子について磁気異方性の方向と強さを測った。

 この計測技術により,IBMは原子1個に1ビット(2進数で1ケタ)の磁気情報を保存でき,記憶デバイスとして使えると見込む。「長編映画3万本弱や,データ量換算で1000兆ビットを超えるであろう『YouTube』の全ビデオ数百万本を,『iPod』サイズの機器に入れておける」(IBM)。

 2件目の研究成果は,単一分子の構造を壊すことなくスイッチング動作に成功したこと。ナフタロシアニン有機分子内に水素(H)原子2個を配置しておくと,電圧パルスの印加でHの位置が変わった。H原子が移動しても分子の外部構造は変化しないので,論理ゲートやメモリー素子としての利用に適しているという。

 Scienceに掲載するレポートのタイトルは以下の通り。

  • 「Large Magnetic Anisotropy of a Single Atomic Spin Embedded in a Surface Molecular Network」
  • 「Current-Induced Hydrogen Tautomerization and Conductance Switching of Naphthalocyanine Molecules」

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