The Linux Foundationは8月29日(現地時間),MicrosoftがISO(国際標準化機構)に提案したオフィス文書フォーマットOffice Open XML(OOXML)に関する公式声明を発表した。OOXMLは現在ISOで標準として採用するかどうかの投票が行われており,投票は9月2日に締め切られる。Linux Foundationはまだ投票を行っていない国に対し「コメント付きノー(No, with comments)」を投票するようにアドバイスしているとしている。
OOXMLはMicrosoft Office 2007のファイル・フォーマットに基づくXMLベースの文書フォーマット仕様。ECMA(欧州電子計算機工業会)で2006年12月に標準化され,現在ISOで審議が行われている。
The Linux FoundationはLinus Torvalds氏がフェローとして所属するLinux推進団体。IBMやIntel,NEC,日立製作所,Hewllet-Packardなど数十社が会員となっている。またLinux Standard Baseと呼ばれるLinuxの標準化も行っている。
The Linux FoundationはOOXMLの国際標準としての採用に関わるメンバーから質問を受け,「コメント付きノー」を投票するようにアドバイスしたという。まだ投票内容を決定していない国に対しても「コメント付きノー」とするよう呼びかけている。ただし,「コメント付きノー」は、完全な許否を意味するものではなく,コメントの内容が解決されれば将来の投票など「イエス」に変更される可能性もある。
The Linux FoundationがOOXMLに対する懸念として主張しているのは以下の点である。
1.OOXMLの仕様が非常に膨大であり,それに見合う十分なレビュー期間なく,問題が十分に洗い出されていない。
2.にもかかわらず,すでに何百もの問題が挙げられており,いくつかはマイナー問題だが,多くはマイナーな問題ではない。問題はここ(PDF)にまとめられている。
3. 実装者がMicrosoftの知的財産を侵さずにOOXMLを実行できるのか。それらの知的財産は利用できるのか。そうだとしてどのようなプログラミング言語で利用できるのか。これらの疑問に対する答えはまだわかっていない。
4.OOXMLはWindowsおよびMicrosoftの他のプロダクトに特定のフォーマットである。Linuxなど他のOSで,コンバーターやトランスレータなしに作成,閲覧できるかどうか不明確である。
「OOXMLはシングル・ベンダーのバイナリ・ドキュメント・フォーマットをダイレクトに移植したものだ。OOXMLは暗号のアルゴリズムやVMLなどで国際規格の再利用を避けており,実装を困難にするコンパチビリティ・セッテイング(footnoteLayoutLikeWW8、autoSpaceLikeWord95、useWord97LineBreakRulesなど)を含む。プラットフォーム特有の機能に関連するバイナリ・コード,クリアになっていない特許および知的所有権を含んでいる」(Linux Foundation Global Initiative Manager John Cherry氏)。
また,The Linux Foundationは,「 Desktop Architects Speak Out on OOXML」としてGoogleやIBMなどの技術者のコメントを紹介している。
KNOPPIXの開発者であるKlaus Knopper氏は,以下のようなコメントを述べている。
GoogleのエンジニアでSambaのメイン開発者であるJeremy Allison氏と,GoogleエンジニアのDan Kegel氏は,以下の趣旨のコメントを述べている。「(すでにISO標準となっているXMLオフィス文書フォーマットである)ODFであれば,ODFファイルを読み、書くことができる好くなとも12のソフトウェアがある。OOXMLを実装しているのは,多くはOOXMLソフトウェアを実行する契約上の同意があるマイクロソフトのパートナーである。ビデオでのベータマックスの例を見ればわかるように、複数の規格が並立することは消費者と業界にとって有害である。MicrosoftのOpen Specification PromiseはOOXMLの現在のバージョンしかカバーしておらず,将来の拡張においてどうなるのか,かなりの法的不確実性がある」
日本では,情報処理学会 情報規格調査会がOOXMLの審査を行っており,「コメント付きノー」の投票を行うことが決まっている(参照:情報規格調査会メンバー村田真氏のブログ)。
◎関連資料
◆Linux Foundation Statement on OOXML