楽天の研究開発部門である楽天技術研究所とまつもとゆきひろ氏は,Rubyによる大規模分散処理フレームワークを開発する。共同研究として開発し,楽天内で実際の業務に使用する。

 楽天ではRuby on Railsを実際に顧客が利用するアプリケーションで採用しており,まつもとゆきひろ氏を2007年6月に楽天技術研究所のフェローに招聘していた(関連記事)。これまで共同研究の方向性について議論を行ってきた。ディスカッションの結果,「エンタープライズ」と「スケーラビリティ」を主要なテーマとする方向性が固まり,間もなくプロトタイプの開発に着手する。まつもと氏が方向性やアイデア,アドバイスを出し,楽天技術研究所が実装を行う。

 楽天技術研究所とまつもと氏は2つのタイプの分散処理フレームワークを開発する方針。

 一つは,小さくは2~3台から手軽に分散処理が行えるような「簡単さ」を追求したフレームワーク。用途としてはログ解析などを想定しており,FAIRY(フェアリー)というコード名で呼んでいる。

 もう一つは,最初から100台以上の大規模な分散処理を指向したグリッド・システム。用途としては検索エンジンなどもにらむ。コード名はROMA(ローマ)である。

 「楽天には数千台のサーバーがある。1800万アイテムの商品データ,ユーザーのデータ,販売データなどデータも膨大で,それを解析するために常に計算が行われている。大規模分散処理の用途の宝庫」(楽天技術研究所 代表 森正弥氏)。開発したフレームワークは楽天で実際に使用する。

 楽天技術研究所では「社外の方ともコラボレーションを持ちながら開発していきたい」(森氏)としており,既に東京大学 准教授 増原英彦氏も楽天技術研究所の顧問として迎えている。

 また開発の成果はオープンにしていく方針。「できればオープンソース・ソフトウエアとして公開したい」(森氏)。2008年のRubyコミュニティによるイベントRubyKaigi(関連記事)で成果を発表する予定だ。