写真1 新潟市の本間課長に被災状況を報告する職員
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写真2 衛星携帯電話を使って、ITベンダーや通信事業者に連絡
写真2 衛星携帯電話を使って、ITベンダーや通信事業者に連絡
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写真3 陸路で運ばれてきた、富士通のメインフレーム部品
写真3 陸路で運ばれてきた、富士通のメインフレーム部品
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写真4 新潟市役所の屋上に設置したパラボラ・アンテナ
写真4 新潟市役所の屋上に設置したパラボラ・アンテナ
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写真5 富士通は新潟市役所と、グループの拠点を結んだ会議システムを構築
写真5 富士通は新潟市役所と、グループの拠点を結んだ会議システムを構築
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 新潟市は8月31日、防災の日にちなんだ「IT防災訓練」を実施した。午前8時40分。総務部IT推進課の本間寿晴課長が「新潟市で震度6弱の直下型地震が発生しました。ただちに職員の安否、情報システムの稼働状況の確認をしてください」と宣言し、訓練が始まった。

 その後数分間で職員から被災状況の報告が上がってくる。「2系統ある基幹システムのメインフレームで待機系が停止しています」「ネットワークがトラブルを起こしていて、関係機関との通信ができません」--(写真1)。メインフレームでは主として住民の情報を管理する「住民基本台帳ネットワーク」が稼働しており、他のシステムに優先して復旧させるとの指示が、本間課長から出される。

 固定電話や携帯電話が使えない想定で、メインのITベンダーである富士通や通信事業者のNTT東日本との連絡は、衛星携帯電話とMCA無線を使った(写真2)。MCA無線は被災を免れた区役所に接続。そこから一般電話で連絡を取り次いでもらった。

 市役所内に置いたメインフレームは2系統あるうちの1系統が被害を受け、ベンダーである富士通から部品を調達しなくてはならないとのシナリオ。これに対して、富士通の県内拠点からヘリコプターで部品を搬送する計画だった。しかし、新潟市内が強い雨に見舞われ、視界が不良に。急遽、陸路で輸送してきた(写真3)。

 市役所内に設置した対策本部には、富士通や保守会社である富士通エフサスの技術者が到着。復旧作業をサポートするため、新潟市役所と富士通グループの新潟や東京の拠点をつないで、テレビ会議のシステムを構築することを決定。通常の通信回線が利用できない想定であり、屋上に衛星パラボラ・アンテナを設置した(写真4)。

 ところが、ここでトラブル発生。天候が悪いため、衛星との接続ができない。そこでPHSや携帯電話を利用して、主として音声でデータを送受信した(写真5)。そして、ネットワーク、メインフレームが順次復帰。11時36分、本間課長が訓練終了を宣言した。

 新潟市は05年に策定したセキュリティ・ポリシで定期的な訓練を義務付け。昨年からITを対象とした防災訓練を課内の数人で始めた。IT推進課の本間課長は「今回は市役所のIT部門とITベンダーで連携し、実際の手順を関係者で実施して確認することにした。中越沖地震の支援作業も続いており訓練の中止も考えたが、災害はいつ起こるか分からないので実施することにした」と語る。