受託ソフト開発に関する会計基準が、プロジェクトの進ちょく度に応じて収益や費用を計上する、いわゆる「工事進行基準」に一本化されることが確実となった。企業会計基準委員会(ASBJ)が8月30日、草案をホームページ上で公開した(http://www.asb.or.jp/)。草案によると、受託ソフト開発は工期や受注額を問わず、2009年度以降は原則として進行基準の適用対象となる見通しだ。
 
 進行基準が適用されるのは、受託ソフト開発のうち、進行途上にあるプロジェクトの進ちょく部分について成果の確実性が認められる場合。成果の確実性を示すために、収益総額や原価総額、決算日における工事進ちょく度の三つの要素に関して、信頼性をもって見積もることが求められる。上記の要件を満たさない場合と、工期がごく短いものに関しては、検収時に収益や費用を計上する「工事完成基準(検収基準)」を適用する。対象企業は上場・非上場や規模を問わない。つまり、顧客の要望に応じて開発する情報システムに関して、基本的に進行基準の適用が義務化されることになる。
 
 ただし草案は主に建設業界における工事契約を意識したもので、「仕様変更が頻繁に起きたり、正式契約の前に作業に着手することがある情報システム業界特有の商慣習が考慮されていない」(大手SIer幹部)と反発の声も上がっている。草案では、こうした情報システム特有の商慣習に言及したうえで、「原価の発生や見積もりに対する、より高度な管理が必要」としたが、具体的な取り組みは各社に委ねられる。進行基準に移行済みの企業は、情報システム業界では野村総合研究所や富士通など限られており、進行基準を事実上義務付ける今回の動きは大きな反響を呼びそうだ。

 ASBJは、企業会計に関する調査研究や提言、基準の制定を行う民間組織。国際会計基準との差違を解消するため、2006年7月以降にワーキンググループや専門委員会を設置するなど、進行基準への移行に関して議論を重ねてきた。公開された草案は、10月1日までASBJが受け付ける意見募集を経て最終決定される。