「BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)を実践する企業は、Web2.0の考え方を取り入れることで、“すり合わせ”や“わいがや”といった作業さえもシステム上に取り込むことができる」。BPMの普及を目指す「日本BPM協会」のBPMコンポーネント部会での研究成果を、同協会の和田正則氏はこう語る。

 和田氏は大手化学メーカーの情報システム部長を経験し、現在はシステム・コンサルティング事業を手がけるワディットに所属している。同氏は、BPMとWeb2.0の考え方を組み合わせることで、これまでシステム化が困難だった“人間系”の作業をシステムで実現できると主張する。具体的な論旨は以下の通りだ。

 まず前提として、ビジネス・プロセスの変化が多い部分にはBPMツールを使うことを推奨する。例えば、受注前の案件管理など、ビジネス・プロセスはある程度確定しているが、顧客の要望や商品の変更によっては変化する可能性がある業務だ。そうした業務では、ビジネス・プロセスの変更のたびにシステムを改修するのではなく、BPMツールに記述したビジネス・プロセスに基づいて、サービス(業務上意味のある単位で構成したプログラム部品)を組み合わせるのが、理想とする。これはSOA(サービス指向アーキテクチャ)の考え方でもある。

 ただし、BPMツールにも限界がある。ビジネス・プロセスが明確に規定できない業務がそれにあたる。ちょっとした打ち合わせや口頭での簡単な確認、承認作業といったものだ。冒頭の“すり合わせ”や“わいがや”も含まれる。そうした業務はそもそも、BPMどころか「システム化するほどのことではない」「システム化に向かない」とみなされてきた領域だ。しかし、「ちょっとした業務の割には、本人が捕まらないと実施できないので、予定を合わせるなどの手間がかかる。日常業務ではそうした手間が想像以上に多い」(和田氏)。

 こうした“人間系”の業務に、「ユーザーが積極的に参加して、Webサイト上に新しいものを作り上げる」という、Web2.0の考え方や技術が有効だと和田氏は語る。例えば、オープンソースのCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)の「Plone」などで構築したWebサイトを利用し、その上でちょっとした打ち合わせをする。関係する担当者や上長がWebサイト上に集まり、「今回の発注量はどうするか」などと書き込みあったり、承認作業などを行う。

 CMS上での作業は、BPMツールで全体的に管理する。CMS上での議論や承認作業は、BPMツール側から1つの「サービス」として実行させることができるというわけだ。例えば、BPM上でのビジネス・プロセスを実行していく上で、人の判断が必要になったときは、CMSにその要求が伝わるようにBPMツールとCMSをつなぐ。具体的には、関係者が閲覧しているWebサイトに、要求事項をポップアップして表示するようにする。CMS上での作業が完了すれば、その結果をBPMツールに返すようにする。BPMツールはその結果を受けて次のビジネス・プロセスの実行に移る。

 CMSを簡易的なグループウエア代わりに使う企業はあるが、「ビジネス・プロセスの実行のために使う企業はまだ例がないはず」と和田氏は話す。