アイルランドValista Internationalで日本支社長を務める野澤裕氏(左)と,NECで第二ネットワークソフトウェア事業部長代理兼コミュニケーションズソリューション本部統括マネージャーを務める奥屋滋氏(右)
アイルランドValista Internationalで日本支社長を務める野澤裕氏(左)と,NECで第二ネットワークソフトウェア事業部長代理兼コミュニケーションズソリューション本部統括マネージャーを務める奥屋滋氏(右)
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 NECは8月22日,電子マネーや各種ポイント/現金などの決済基盤を構築するサービスに乗り出す,と発表した。NGN(次世代ネットワーク)の普及を前提とする今後のネットワーク社会にフォーカスしたSI(システム・インテグレーション)であり,アイルランドに本社を置く決済パッケージ・ソフトのベンダー,Valista Internationalの製品を用いる。関連事業の売上目標やユーザー数などは未定だが,Valista日本支社と共同で,まずは決済ソフトのマーケティングに注力する。

 Valistaの決済ソフトは,エンドユーザーごとに電子的な財布を管理し,決済機能を提供する。クレジット・カードだけでなく,電子マネーや各種ポイントなどが混在した決済システムを構築できるのが特徴だ。キャリア(通信事業者)だけでなく,ISP(インターネット接続事業者)や金融機関,EC事業者など,異業種を横断したバリュー・チェーンを実現できるとしている。すでに国内でも,NTTドコモの携帯決済サービス「DoCommerce(ドゥコマース)」や,エンターテインメント大手であるタイトーのポイント制度などにValistaの決済ソフトが使われている。

 NECで決済システムのSIを推進する立場にいる奥屋滋氏は,「例えば,ある電子マネーを別の電子マネーに変換/移行するなど,電子的な財布に入っているお金を,すぐに別の用途に利用できるようになる」とValista製品の利用イメージを解説する。同氏は「財布の中に割引券が入っていても,その割引券を使いたい時に使いたい用途で使えないようではダメ」と警告。Valistaの決済パッケージ・ソフトを採用することで,従来に比べて決済機能を持つ情報システムを短期・安価に構築できるようになるという。

 Valista製品があらかじめ用意している機能モジュールには,ユーザー認証,与信,決済,清算といった中核機能のほか,物流の管理,在庫管理,プロモーション(販売促進)機能,ポイント管理,アフェリエイトなどがある。パッケージは,利用用途に合わせて以下の3種類を組み合わせる。(1)valista PaymentsPlus:決済機能の中核ソフト。(2)valista SettlementPlus:事業者間の利益分配と清算機能を提供。(3)valista OffersPlus:割引キャンペーンの実施などEC店舗向けのマーチャンダイジング機能を提供する。

 Valista日本支社が国内で提携している企業は,(SIをやらない)コンサルティング会社の「ヘッドストロング・ジャパン」と,NECの2社である。海外では決済機能その他をネットワーク経由で利用できるSaaS/ASP型のマネージド・サービスも提供しているが,国内での提供は未定である。まずはパッケージのライセンスをSI込みでユーザー企業に販売するという。

 ただし,NECは「まずは低価格で気軽に利用できるマネージド・サービスを利用して,気に入ったらパッケージを導入するという,段階的な導入ができるようになるとよいだろう」(奥屋氏)と,Valistaと共同で国内でもマネージド・サービスを開始する意向を示している。

 「まずは決済パッケージの認知度を上げることが重要」と語るのは,Valista Internationalの日本支社長である野澤裕氏。ネットワーク社会において決済機能の重要度が増す一方で,決済という言葉は分かりにくいとしている。「ビリング(Billing=課金/請求)と聞けば,誰もがピンッと来て,ビリングという用語が何を指し示しているのかを理解する。ところが,我々が決済と表現して取り組んでいる分野は,まだまだシステムの一分野として立場が確立しているわけではない」という。