マイクロソフト日本法人のダレン・ヒューストン社長
マイクロソフト日本法人のダレン・ヒューストン社長
[画像のクリックで拡大表示]

 「日本の『デジタル・ワークスタイル(職場のIT化)』は,欧米に比べて数年遅れている。1995年以降における日本の生産性の伸びが欧米の半分に留まっているのは,ここに原因がある」--マイクロソフト日本法人のダレン・ヒューストン社長(写真)は8月21日,ITエンジニア向けのイベント「TechEd 2007 Yokohama」でこう訴えた。

 ヒューストン社長は,日本において「デジタル・ワークスタイル」の浸透が進まない理由を「企業のIT予算の70%が既存システムの保守に使われ,新規システムの投資が行われていないから」と指摘する。ヒューストン社長は「年金問題やWinnyによる情報漏えい事件に見られるように,日本でもレガシー・システムを維持することのコストや複雑性が明らかになった。レガシー・システムを,Windowsのような標準技術に基づくオープン・システムに移行することで,日本のITを取り巻く深刻な問題を解決してほしい」と訴えた。

 ヒューストン社長が日本のTechEdで基調講演を行うのは,これが3回目。ヒューストン社長が着任と同時に始めた,日本における同社の3カ年計画「Plan-J」も,今年で3年目を迎えた。ヒューストン社長は,「Plan-Jは,(1)日本での投資の拡大,(2)技術革新の促進,(3)政府や教育機関,産業界とのパートナーシップ--の三つから成り立っている。支店網の整備など,投資の拡大や他社とのパートナーシップの強化は順調に進んでいる。自分に残された仕事は,日本における技術革新の促進だ。日本の『デジタル・ライフスタイル(家庭のIT化)』は,世界で一番進んでいるが,デジタル・ワークスタイルの進ちょくは欧米に比べて遅れている。デジタル・ワークスタイルの促進にまい進したい」と強調する。

 ヒューストン社長といえば,2006年の「TechEd 2006 Yokohama」の基調講演で,日本のITプロフェッショナルが「キビシイ,キツイ,カエレナイ」の「3K」に苦しんでいると訴え,大きな話題を呼んだ。今回の基調講演では,「昨年私が3Kについて触れたのは,顧客からの厳しいフィードバックを貰っていたからだ。今年(2007年)は,日本のIT業界の3Kを解消する『4S』を紹介したい」(ヒューストン社長)と語り,マイクロソフトが「Skill(資格制度やトレーニング制度の充実)」,「Solution(オンライン情報サービスであるTechNetオンラインやMSDNオンラインの拡充)」,「Satisfaction(セミナーなどのオフライン・イベントの実施)」,「Synergy(オンラインやオフラインのコミュニティ支援)」という視点で,ITエンジニアの支援活動を強化すると訴えている。

 8月21日から24日まで横浜で開催される「TechEd 2007 Yokohama」では,マイクロソフトが2007年内の完成を目指している次期サーバーOS「Windows Server 2008」と次期統合開発環境「Visual Studio 2008」,2008年内の完成を目指している「SQL Server 2008」の技術情報を中心に,数多くのセッションを実施する。TechEdにおけるこれら新製品のセッションの模様は,今後ITproでもレポートをする予定。

 なお マイクロソフトは同日,次期サーバーOS「Windows Server 2008」と,次期統合開発環境「Visual Studio 2008」,次期データベース「SQL Server 2008」の「発表イベント(ローンチ・イベント)」を2008年4月15日に開催すると発表した。米国では,これら3製品の発表イベントは,2008年2月に開催する。日本では4月15,16日に開催する技術説明会「the Microsoft Conference 2008」を発表イベントとし,これら3製品の技術的な詳細を周知していくとしている。