財団法人デジタルコンテンツ協会は2007年8月8日、2006年のデジタルコンテンツの市場動向を発表した。8月9日に報告書「デジタルコンテンツ白書 2007」を発行するのに先駆け、その内容を抜粋したもの。これによると、2006年のデジタルコンテンツの市場規模は2兆7699億円で、前年比8.3%増となった。同協会の田中誠一常務理事は「CDなどのパッケージソフトが低調な一方で、パソコンや携帯電話向けのコンテンツ配信が好調に伸びている」と総括した。

 この調査における「デジタルコンテンツ」とはパッケージソフト、インターネットによる配信、携帯電話向けの配信のいずれかで流通するデジタル形式のコンテンツを示す。分野別の市場規模を見ると、映像は洋画の興業不振、廉価版ソフトの販売でDVD販売が低下。一方でインターネット配信は前年比15.7%、携帯電話向け配信は同24.3%と伸びた。音楽も同様の傾向で、CDの販売とレンタル、DVD販売が低調な一方、インターネット配信は同41.5%と大きく伸びている。

 図書もインターネット配信、携帯電話向け配信が好調だ。特に、電子書籍は伸びが著しい。市場として立ち上がったばかりで規模は小さいものの、インターネット配信が同69.7%、携帯電話向け配信が同331.3%となった。最近は電子書籍や電子コミックのコンテンツが続々と増えており、今後の伸びが期待される。

 唯一、パッケージソフトで堅調な伸びを示したのがゲーム分野だ。ゲーム専用機向けソフトは同31.6%だった。牽引役は任天堂の「ニンテンドーDS」。シューティングゲームやロールプレイングゲームなどの従来型ソフトに加え、頭脳系のソフトが人気を集めたことが大きい。

「雑誌→コミック」から「ネット→コミック」へ

 同協会では、デジタルコンテンツを含むコンテンツ産業全体の市場規模についても発表した。それによると、コンテンツ産業全体の2006年の市場規模は13兆9890億円で前年比1.1%増。パッケージ流通の落ち込みとインターネットによるコンテンツ流通の伸びを相殺した結果がこの微増になった。

 この結果を基に、同協会の企画調査部の福島寿恵氏は「デジタルコンテンツの攻勢がコンテンツ産業のビジネスモデルを変えつつある」と指摘。具体例として、電子コミックの現状を挙げた。

 それによると、従来、コミックはまず連載中の雑誌で人気を集め、それを受けてコミックが売れていた。しかし、近年は「デスノート」や「NANA」「のだめカンタービレ」のように、漫画を原作にした映画、テレビドラマが相次いでヒット。それを受けてコミックが売れている。その一方で「月刊少年ジャンプ」など老舗漫画雑誌が休刊する状況にある。また、電子コミック化する際も、従来のように既存のコミックを電子化するのではなく、電子コミック向けに新作を書き下ろす流れが増えているという。「今後はまずは電子コミックで配信し、人気が出たものをコミックにして出版するという流れが増えるのではないか」(福島氏)と予測する。