住友商事は8月3日,米ジンブラのWebコラボレーション・ツール「Zimbra Collaboration Suite」(ZCS)の販売戦略を説明した。住友商事はZCSの日本での事業化権を持つ。ZCSはメール,スケジュール,住所録などの機能を備えるWebベースのツール。国内ではSaaS(software as a service)およびライセンス販売で提供している。

 同種のサービスに米グーグルの「Google Apps」があるが,住友商事では「コラボレーション・ツールは,グーグルではなく自社か信頼するホスティング業者で」をキーワードに,ZCSを企業やISP(インターネット・サービス・プロバイダ)に売り込むという。

 ZCSは日本語化済みで,住友商事と提携するフィードパスが「feedpath Zebra」というSaaSとして提供中。住友商事はライセンス販売を手がけるが,その技術サポートや保守はフィードパスが担当する。国内では10数社のユーザー企業がZCSを利用中で,ほかに大規模案件の商談も進んでいるという。ライセンス価格は「Standard Edition」の場合,メールボックス1つあたり年間3600円(この価格は定価。メールボックス数が2500以上の場合はボリューム・ディスカウントがある)である。

マッシュアップを武器に

写真●米ジンブラの「Zimbra Collaboration Suite」の画面
写真●米ジンブラの「Zimbra Collaboration Suite」の画面
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 ZCSには,異なるサービスを組み合わせることで新しいサービスを生み出す「マッシュアップ」が可能という特徴がある。例えば,メール本文の住所を自動認識して,地図サービスからデータを取得し,ポップアップ表示できる(写真)。「Zimlet」とアプリケーションを用意すれば,Zimbraの搭載機能と外部のサービスを柔軟に連携させられる。

 住友商事は,マッシュアップを活用することで,ZCSを電子商取引のプラットフォームとして活用できると主張。例えばISPなどのサービス事業者がZCSをユーザーに提供。ここで米アマゾンが提供するAPI(application programming interface)を活用すれば,自社サービス内,つまりユーザーが使うZCSの画面の中で書籍をオンライン購入したり,VOD(ビデオ・オンデマンド)サービスを利用したりといった新しいビジネスモデルを実現できる。ZCSの画面の中で広告や電子商取引ができれば,ユーザーがほかのサイトに移動することによる利益逸失を阻止することにつながる。

 佐藤誠之ネットワークソリューション事業部部長代理は,「米国では最近,ポータルを設けメール・サービスを提供しているISPが,ユーザーが米グーグルのサービスに“逃げて”しまう事態に対抗するツールとして導入を決めるケースが増えている」と話す。例えば,ISP事業を持つ米コムキャストが導入を決定している。「コムキャストは,クアドロプルプレイのサービスにいかにユーザーをひも付けるかを考えているだろう。ZCSをサービスで提供して,そのスケジュール表に番組表を付けて録画予約をできるようにしたり,DVDのリリース日を入れたりする使い方をしてくると思う」(佐藤部長代理)。国内でも導入を検討しているISPがあるという。

 マッシュアップのための外部サービス連携機能も強化されている。例えばZCSは米セールスフォース・ドットコムが提供する業務アプリケーションのプラットフォーム提供およびディレクトリのサービス「AppExchange」と連携可能。ZCSで受信したメールを,AppExchange側にある顧客とのやり取りの履歴に追加できる。コクヨのファイル送受信サービス「@Tovas」と連携させると,ZCSの画面の中でメールを送信するのと同様の操作で,@Tovasを介してファイルを送信できる。

 こうしたZCSの特徴を生かして住友商事は,「何でもグーグルに預けてしまっていいのでしょうか。自社で,あるいは信頼するホスティング業者でシステムを持ち,グーグルと同じようなことができるのがいいのではないでしょうか」というメッセージを企業やISPに発信していきたいとする。

 ZCSには機能拡張の予定もあり,開発元のジンブラは次のバージョンで,ポータルやIM(instant messaging),Webから聞けるボイス・メールなどを加える予定。「ベータ版だが,オフライン対応のソフトウエアも出ている。クライアントのローカル環境にデータベースを置き,直近に使用した2Gバイト分のデータを保管できる。これを使うと,オフライン環境でメールの参照や作成ができる」(佐藤部長代理)。米アップルのスマートフォン「iPhone」への対応も完了している。