写真1●ICタグを取り付けたフレコンと、廃プラスチックをプレスしたもの 実験には排出事業者としてリコーと東陶機器が参画した
写真1●ICタグを取り付けたフレコンと、廃プラスチックをプレスしたもの 実験には排出事業者としてリコーと東陶機器が参画した
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写真2●フレコンに取り付けたICタグを読み取っているところ
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写真3●プレス品に取り付けたICタグを読み取っているところ
写真3●プレス品に取り付けたICタグを読み取っているところ
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 NTTデータ経営研究所やリコー、山九など7社は、廃プラスチックなどの“循環資源”が適切に処理されたというトレース情報をICタグを活用して提供する事業会社を08年3月までに設立する。循環資源は、廃棄物の中でも有価で取引されるもので、廃プラスチックを中心に海外への輸出が拡大している。しかし海外などで有用な部分だけを取り出して、残りを不法投棄するといった行為が耐えないため、CSR(企業の社会的責任)に敏感なメーカーに対して、確実なトレース情報を提供するニーズがあると判断した。

 新会社の主な収益源は、循環資源輸出のワンストップ・サービスと見ている。循環資源の引き取りと輸出を一手に手がけ、トレース情報の提供とセットにしてサービスする。廃プラスチックなどの循環資源は従来、「国内では廃棄物としてメーカーがコストを支払って廃棄していた。それが有価で広く輸出されるようになったのは、ここ数年のこと」(NTTデータ経営研究所の林孝昌 社会・環境戦略コンサルティング本部シニアマネージャー)という。もともとコストを支払って処分していたものが有価になるのだから(廃プラスチックが40フィート・コンテナで約80万円など)、その一部分を、不法投棄防止のための保険としてほしいというのが新会社の提案である。「海外で不法投棄された廃棄物がメディアで報道され、そこに自社のロゴが写っていた」といった事態を避けるためのものだ。

 NTTデータ経営研究所などは06年度に北九州市と中国・天津市の支援を受け、循環資源にICタグを取り付け、中国に輸出してリサイクルするまでをトレースする実証実験を行った。設立する新会社も北九州市に本拠を置き、まずは天津市との間でサービスを開始する。

 実証実験では、サトーのリストバンド型ICタグを循環資源に取り付けた。元々医療機関向けに、投薬ミスの防止を狙って患者の手首に巻き付けて使えるようにしたICタグで、耐久性を強化してある(価格は約300円で使い捨てにする)。これを廃棄物が入ったフレコン(運搬用の大きな袋)などに巻き付け、日本と中国のリサイクル業者がそれぞれ読み取ってトレース情報を登録した(写真1~3)。屋外にも放置される対象物なので、バーコードでは汚れて読み取りにくくなる点などがICタグを採用した理由である。日本と中国をつなぐトレーサビリティ・システムは、エクシードシステムが開発した。新会社でも同様の仕組みを運用する予定である。

 新会社は日本と中国において、リサイクル会社・物流業者などの審査や立ち入り検査も実施する。適正な処理が可能と判断すれば、今回の事業のための認定業者として認証する。中国側の認証業務については、天津市の自治体と共同して進めるよう既に覚書を交わしている。

 この7月に新会社設立に向けたコンソーシアムを設立した。NTTデータ研究所とリコー、山九、サトーのほか、リサイクル関連のエコマテリアル、ひびき灘開発、日鐵運輸の計7社が参画する。