情報処理推進機構(IPA)が実施する国家試験である「情報処理技術者試験」で、2008年秋をメドに「ストラテジスト試験」が新たに導入される。

 経済産業省産業構造審議会情報サービス・ソフトウェア小委員会が7月20日に公表した報告書「高度IT人材の育成をめざして」の中で明示された。「経営とIT(情報技術)」について深い理解を持ち、企業などのCIO(最高情報責任者)やそのスタッフ、将来これらの職務を担う人向けの試験が、国家試験として実施されることになる。

 経済産業省情報処理振興課の永見祐一係長は、「従来の試験制度は、情報システムを提供する『ベンダー』側の人材を意識した試験だった。企業のあらゆる業務にITが組み込まれた昨今では、情報システムを利用する『ユーザー』側の人材にも配慮した試験制度に変える必要があった。また、従来の試験制度ではCIOやその候補者をあまり意識していなかったが、今後はこうした層にもアピールしていく」と説明する。

 報告書が示す情報処理技術者試験の改革案では、情報処理に携わる人材を「基本戦略系」と「ソリューション系」に大別しているのが特徴。ストラテジスト試験は、基本戦略系、すなわち新たなビジネスモデルの創出や業務効率化、内部統制の強化などのビジネス戦略を担う人材向けの試験として位置付けられている。

 経済産業省は、ストラテジストは現在国内に約5万7000人いて、約85万人の情報サービス業務従事者の6.7%を占めると推計。この層がストラテジスト試験の対象となると見ている。新しい情報処理技術者試験のランクはレベル1~7に体系化しており、ストラテジスト試験はレベル4に位置する。

 現行の情報処理技術者試験には「システムアナリスト試験」があるが、ストラテジスト試験は、「これの対象範囲をさらに広げるイメージになる」(永見係長)という。詳しい出題範囲は今後詰めるが、「データベース」「セキュリティー」などの技術的な知識から、「プロジェクトマネジメント」「調達マネジメント」といったプロジェクト運営に必要な知識、「組織論」「企業会計」「知的財産権」「サプライチェーン・マネジメント」などの経営知識までを幅広くカバーする予定である。

 「例えば、ある状況の時にシステムを活用するべきかしないべきか、システムを導入する場合は作り込みにするべきか外部のサービスを利用すべきか、M&A(企業の合併・買収)時に両社のデータをいかにつないで戦略的に活用すべきか、という問題を出すことになる」(同)

 現行のシステムアナリスト試験の合格率は過去6年間平均で8.7%と狭き門になっている。「人材育成という観点から敷居を低くするため、合格率は二桁以上に引き上げたいと考えている。その代わり、試験の成績だけではなく、合格に値する業務履歴があるかどうかも審査する」(同)という。

■変更履歴
最終段落のコメント中、合格率の目標に関する数値を修正しました。[2007/08/04 06:00]