写真1●Rubyビジネス・コモンズ会長に就任した最首英裕氏。基調講演では「茫洋たる東京ではなく、九州という地域の連帯感から、世界を変えていこう」と呼びかけた
写真1●Rubyビジネス・コモンズ会長に就任した最首英裕氏。基調講演では「茫洋たる東京ではなく、九州という地域の連帯感から、世界を変えていこう」と呼びかけた
[画像のクリックで拡大表示]
写真2●「Rubyの未来」に関して講演するまつもとゆきひろ氏。先週設立発表を行った「Rubyアソシエーション」とRubyビジネス・コモンズは、活動のレイヤー(層)が異なり、補完的な関係にある、とした。また今後予定する楽天技術研究所との共同研究では、スケラービリティへの挑戦が大きな課題となることを明らかにした
写真2●「Rubyの未来」に関して講演するまつもとゆきひろ氏。先週設立発表を行った「Rubyアソシエーション」とRubyビジネス・コモンズは、活動のレイヤー(層)が異なり、補完的な関係にある、とした。また今後予定する楽天技術研究所との共同研究では、スケラービリティへの挑戦が大きな課題となることを明らかにした
[画像のクリックで拡大表示]
写真3●Rubyビジネス・コモンズの説明図。Rubyによるシステム開発のビジネス経験から得られた知識を蓄積・共有することで、地域経済の活性化を図る
写真3●Rubyビジネス・コモンズの説明図。Rubyによるシステム開発のビジネス経験から得られた知識を蓄積・共有することで、地域経済の活性化を図る
[画像のクリックで拡大表示]

 2007年7月31日,福岡市内で,プログラミング言語Rubyを実ビジネスに適用する際に必要となる知識を共有する団体「Rubyビジネス・コモンズ」の設立総会が開催された。地元のソフトウエア企業の関係者を中心に約300名が参加。プログラミング言語Rubyの開発者であるまつもとゆきひろ氏,麻生渡福岡県知事,Java言語によるRuby実装「JRuby」開発者のThomas Enebo氏らが登壇し,同団体への期待を語った。

 Rubyビジネス・コモンズは,プログラミング言語Rubyや,Rubyによる開発フレームワークRuby on Railsをビジネスに適用する場合に必要となる様々な知識を共有することで,ビジネスを活性化していこうという趣旨の団体である。当面,福岡市を拠点に活動し,九州という地域に密着した活動として出発する。ただし参加資格は設けず,どの地域の会社,団体でも参加可能とする。

 設立総会では地元・福岡県の麻生渡知事も登壇,「世界的な共通言語が発展し,福岡の地から情報発信がされることを期待している。福岡県はコモンズの活動を全面的に応援する」と発言,大きな拍手を浴びた。

「九州の地域に密着,ムーブメントを作り出す」と最首会長

 同団体の会長に就任したのは,イーシー・ワン代表取締役社長の最首英裕氏である(写真1)。同社は最近Ruby on Railsによる開発案件を手がけた。その時,Ruby関連技術の変化がきわめて急激であることから,「開発に必要な知識を会社内に占有して競争優位性を得ることは難しく,むしろ知識を共有してビジネスの活性化を図るべき,という考えに至った」と話す。

 また,この種の活動は運動(ムーブメント)としての勢いが重要という考えから,技術者だけによるコミュニティや,ベンダー企業のコンソーシアムとは異なる形での活動形態をとることにした。開発に必要な技術的な知識だけでなく,顧客への提案に必要となる知識や,営業活動に役立つアイデアなどの情報も蓄積していく。九州の地域密着型の団体として出発するのも,このようなムーブメントを作り出すのに優位性があると考えたためであるという。

まつもと氏の楽天での研究テーマは「スケーラビリティ」

 Ruby言語の開発者であるまつもとゆきひろ氏は,「Rubyの未来」と題して講演した(写真2)。特に強調したのはスケーラビリティである。まつもと氏は最近,楽天のフェローに就任しているが,楽天での研究課題はスケーラビリティに関係していることを明らかにした。「Rubyの未来は,より大きなものを扱えるスケーラビリティにある。そして,Rubyは,今までは少数の人々が作ってきたけれど,これからは皆さんが一緒に作っていく」と講演を締めくくった。

 続いて講演した楽天の安武弘晃氏(取締役常務執行役員 開発・編成統括本部CPO室室長)は,「サービス企業にこそ,先端的な技術研究が必要とされている」と,まつもとゆきひろ氏をフェローとして迎えた理由について説明した。

Railsプラグイン6種をオープンソースに

 Rubyビジネス・コモンズの具体的な活動として,最首氏が率いるイーシー・ワンが開発したRuby on Railsのプラグイン6種類をオープンソース・ソフトウエアとして公開した。アプリケーションの実行画面に画面の仕様書を表示するプラグイン「centraier」,データベース定義の仕様書を自動生成する「desc_models」,セキュリティ対策を効率的に行うためのプラグイン「security_extensions_strict」などである。詳細はRubyビジネス・コモンズのサイト記述があり,ソフトウエア本体はRubyForgeからダウンロード可能となっている。