写真●東京証券取引所の斉藤惇社長
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 東京証券取引所は7月31日、いったん約定した注文が誤発注だったと判明した場合に当該注文を取り消しできるように業務規程を一部改正すると発表した。9月30日に施行する。斉藤惇社長は「(2006年から取り組んできた)東証における誤発注対策が完了する」と述べた。

 9月30日以降は、誤発注により大量の売買が成立し、長期にわたって決済ができなくなる可能性が極めて高く、市場が混乱する恐れがあると東証が認めたときは、東証が当該注文の売買を取り消せるようにする。

 東証が取り消した売買は、そもそも成立しなかったものとみなす。取り消しにより、取引参加者などが損害を受けることがあっても、誤発注を出した取引参加者あるいは東証に故意または重過失があった場合を除いて、損害賠償を請求できないものとする。

 東証はこれまで、一度約定した注文は取り消されることなく決済まで進む「決済の確実性」が証券市場の信頼性につながると考え、たとえ誤発注でもいったん約定した注文は取り消しできないルールを適用していた。ところが、2005年12月に発生したみずほ証券によるジェイコム株の誤発注を機に、方針を転換。想定できない規模の売買が誤発注により成立し、当該売買にかかる決済が長期間できなくなると、証券市場の機能が麻痺し、大きな混乱を招くと考えるようになった。このため、06年から誤発注の取り消しルールの制定を目指してきた。

 具体的には、06年4月に上場株式数の30%を超える注文を受け付けないなどのシステム変更を完了。6月には、新規上場銘柄の初値決定前に受け付けた注文を対象に、公募価格から算出した下限以下の値段の注文などをエラーとするチェック・プログラムを稼働させた。その後11月に約定の取り消しルールに関する検討ワーキングを設置。07年4月に取り消しルールを制定した。そのルールを反映したのが今回の対応である。