CA Unicenter Network and Systems Management r11.1のダッシュ・ボード画面
CA Unicenter Network and Systems Management r11.1のダッシュ・ボード画面
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 「今後の統合運用管理にはインシデントの視点が必須になる」---。運用管理ソフト大手の日本CAは7月26日,ITproの取材でユーザー企業における運用管理業務の変化をこう語った。この取材は,同社が運用管理ソフトの新版「CA Unicenter Network and Systems Management r11.1」を7月12日に出荷したことを受けたもの。各種のインシデント情報やシステム資源情報を活用することで,インシデントを検知してから解決するまでの時間を短縮しなければならない,というわけだ。

 同社は,昨今の運用管理業務の変化として,情報システムの障害などのインシデント情報を管理する“サービスデスク”と呼ばれる製品ジャンルが一般化した点を指摘する。「すでにITILという言葉を使わなくてもよくなった。誰もがサービスデスクの意義を理解している。これは大きな進歩だ」(同社)。計測値がしきい値を超えるといった各種のイベントの検知を,サービスデスクと連携させることで,問題の発生検知から解決までの時間を短縮できる。

 これに並行して,ユーザー企業の情報システムにもサービス事業者同様にSLA(サービス・レベル・アグリーメント)の意識が高まっているという。背景には,内部統制などの諸事情によって,企業内で業務システムのインフラが共有化されるようになってきたことがある。これに合わせて,情報システム部門に「業務部門へのサービスを提供する」という意義が強まっている。

 こうした経緯を受けて,統合運用管理ソフトは相互に管理リポジトリを連携させて,より詳細な情報を活用できるように進化しているという。日本CAの統合運用管理ソフト「Unicenter」の現行版r11では,ITILのCMDBに相当するリポジトリ・データベースを相互に連携させている。連携するのは,サービスデスクの「Unicenter Service Desk」(2006年9月),アセット(資源)管理の「Unicenter Asset Portfolio Management」(2007年5月),統合監視の「Unicenter Network and Systems Management」(2007年7月)などである。

 Unicenterでは,管理コンソールにインシデント管理とアセット管理のデータを連携させることで,従来の「イベント」に加え,新たに「アラート」と呼ぶ通知機構も実装した。各種のイベント通知の根本的な原因となっている要素を導き出して,取り組むべき優先順位や発生からの経過時間などを表示する。アラート機能の背景には,監視対象から上がってくる各種のイベント通知を羅列するだけでは,アラートとして捉えるべき重要な情報を見逃してしまうという状況がある。

 アラートを上げるための定義項目は,GUIを用いたウィザードで設定できる。標準では5種類の項目を持つ。例えば,あるルーターが落ちた際に影響を及ぼすサーバー機はどれかといった定義情報である。このルールにより,あるサーバー機につながらないという「イベント」に対して,そのサーバーがつながっているルーターが落ちていることを原因の要素として導き出す運用が可能になる。

 これまでもイベントの検知は自動化されていたが,イベントを検知してから行動を起こすまでが属人的だったという。例えば,監視ツールに上がったイベント検知情報を手動でExcelや他社のツール(BMC Remedyなど)に移すといったユーザーがいたという。一方,新版では,CMDB連携により,イベント通知後の行動を支援できるようになったとしている。

 また,新版であるr11.1の監視ソフトでは,情報の“見える化”にも留意した。具体的には,ポートレット(Portlet)による監視ポータル画面を,ダッシュ・ボードとして提供できるようにした。CIO(最高情報責任者)向けポータル画面やエンジニア向けポータル画面など,ロール(役割)ベースのポータルに,個々の監視項目をポートレットとして張り付けられる。