米Microsoftはインターネット検索大手の米Googleとの争奪戦に競り勝ち,ゲーム機「Xbox 360」およびWindows搭載パソコン向けオンライン・サービス「LIVE」で動く米Electronic Arts(EA)の新作ゲームを対象とするゲーム内広告配信契約を獲得した(関連記事:Microsoft,ソーシャル・ニュース・サイトDiggと広告配信で提携)。EAは世界最大のゲーム会社で,「Madden Football」「Tiger Woods Golf」「NHL Hockey」「NASCAR Racing」などの作品を手がけている。

 この契約には,二つの理由から大きな意味がある。一つ目の理由は,Microsoftが広告分野で大手のGoogleを打ち負かせたこと自体に驚きがあった。二つ目の理由は,この契約がEAの全作品を対象としている点だ。EAの作品は,売り上げ記録を持つものがあるし,毎年新作が出るものも多い。Microsoftが2006年に買収したゲーム内広告会社のMassiveでCEOを務めるCory Van Arsdale氏は「ネットワークの戦い」と述べる(関連記事:米MS,ビデオ・ゲーム用広告の米Massiveを買収)。これに対しGoogleは,2007年3月に同業の米Adscape Mediaを買収した(関連記事:Google,ゲーム内広告のAdscapeを買収)。

 ゲーム内広告で得られる収入はまだ大きくないものの,ゲーム/メーカーと広告主が広告やその他商品をゲーム内へ配置する画期的な新手法を見つけるにしたがい,数年で状況が変わるだろう。年間300億ドル以上の規模があるゲーム業界は,映画業界をも上回る儲かる産業で,ベストセラー・クラスになると制作コストは1作当たり平均2000万ドルもかかる。

 EAによると,Microsoftのオンライン・ゲーム・サービスがよく普及していて洗練されていることから,同契約の対象はLIVEサービス向けゲームに限るという。任天堂やソニーといったゲーム機メーカーが提供している同種のオンライン・サービスは,Microsoftのものに比べずっと初歩的なレベルにある。さらにEAは「こうしたメーカーは自社のサービスを(Microsoftよりも)厳しく管理しており,同様の契約を結ぶことが難しい」と述べる。なおMicrosoftのゲーム部門チーフPeter Moore氏は7月第3週,Microsoftを退社した。同氏は,EAのスポーツ・ゲーム・フランチャイズ事業を担当する(関連記事:Microsoftのゲーム部門の幹部社員が辞職,EAに入社)。今回の契約とMoore氏の転職は,偶然の一致らしい。