日本生まれのプログラミング言語「Ruby」をビジネスで利用する際のノウハウを集積・共有化するためのコミュニティが新たに発足する。名称は「Rubyビジネス・コモンズ」で,7月31日に正式に設立される。事務局は福岡に置き,当面は九州地区に根ざした形で活動を展開する。7月24日に開かれた記者説明会で,福岡県商工部国際経済課の合野弘一企画監は,「県としてさまざまなIT施策を打ち出してきたが,ビジネスも人も東京に取られてしまっているのが現状。新たなコミュニティの活動が地域活性化につながることを期待している」と語った。

 Rubyビジネス・コモンズは,Rubyおよび開発フレームワークRuby on Rails(Rails)をビジネスに利用する際のさまざまなノウハウを集め,共有化することを目的とする。ここでいうノウハウは,「Railsを使ったアプリケーションのパフォーマンスをいかに上げるか」といった技術ノウハウに加えて,「顧客からの要望に対し,Railsを使ってどのようなソリューションを提案できるか」といったビジネス面でのヒントも含まれる。これらのノウハウを参加企業・団体から集め,Rubyビジネス・コモンズのWebサイトや,メーリングリスト,wikiなどを通じて提供していく。

 並行して,Railsを利用できる人材の育成を進めていく。「Rails講習会」を毎月開催するほか,合宿形式でビジネス上のアイデアを出し,その場で実装する「アイデア100本ノック・開発合宿」や,インターネット上で開発者がプログラムを自由に動かせるようにする環境「Playground」なども提供していく。アイデア100本ノック・開発合宿で得られたアイデアや実装のノウハウも公開していく考えだ。

 同団体の設立準備委員会代表を務める,イーシー・ワンの最首英裕社長は,「いまRailsを使ったシステムを顧客に提案すると,勝率はかなり高い。だが,人材が不足していることがネックになっている。コミュニティの活動を通じて実力のある人材が育成できれば,当社だけでなく『ぜひその会社に頼みたい』と考える企業が出てくるはず。加えて,Railsを使うとWebアプリケーションをスピーディーに開発できるので,地場の中堅中小企業からの受注につなげやすいのではないか」と話す。イーシー・ワンはRubyビジネス・コモンズの設立にあたり,同社が蓄積したRailsに関するノウハウを同団体に提供するという。

 Rubyビジネス・コモンズ設立準備委員会には,イーシー・ワンのほか,伊藤忠テクノソリューションズ,サン・マイクロシステムズ,日本オラクルなどの企業や,九州大学などの学校・専門学校など43団体が参加している。Rubyの開発者であるまつもとゆきひろ氏が所属するネットワーク応用通信研究所も,参加メンバーの1社である。7月31日には,福岡市のソフトリサーチパークで,同団体の設立総会が開催される。