総務省の諮問機関である情報通信審議会電気通信事業部会は7月23日,ユニバーサルサービス制度の算定ルールの見直し 「基礎的電気通信役務の提供に係る交付金及び負担金算定等規則の一部を改正する省令案」に対する意見募集を開始した。

 ユニバーサルサービス制度は2007年1月から実運用が始まったばかりだが,ユーザー負担が今後増加することが確実となっているため,情報通信審議会が総務省に対して算定ルールの見直しを要求(関連記事)。総務省は算定ルールの改正案を提示し,ユニバーサルサービス委員会で議論してきた(関連記事)。

 ユニバーサルサービス委員会は,「NTT東西地域会社への補てん対象を高コスト回線の上位4.9%とし,補てん額は1回線当たりの全国平均コスト+2σ(標準偏差の2倍)を上回った部分」とする改正案を「十分な妥当性を有する」と判断し,意見募集を実施することにした。意見募集は8月23日まで。同案が採用された場合はNTT東西に払う補てん額が減り,ユーザーの負担額(番号単価)は2007年度(2008年1月から負担)が月額4~6円,2008年度(2009年1月から負担)が月額6~8円になる見通しである(改正前の推定では2007年度が月額9~13円,2008年度が月額13~17円)。

NTSコストの一部を接続料による徴収に変更

 電気通信事業部会は同日,(1)「2008年度以降の接続料算定のあり方」に関する答申案と(2)「事業用電気通信設備規則等の一部を改正する省令案」に対しても意見募集を開始した。意見募集はいずれも8月23日まで。

 (1)は電気通信事業部会接続委員会で,長期増分費用モデル研究会がまとめた新モデルの評価やNTS(non traffic sensitive)コストの扱い,NTT東西における接続料の格差などについて議論していた(関連記事)。一連の議論で注目されていたのが,NTSコストの扱いである。

 NTSコストとは,電話サービスの運営に必要な経費のうち電話の通話量に依存しない固定部分のコストのこと。以前は接続料として徴収していたが,2005年度から5年間かけて段階的にNTT東西の基本料として付け替えている。このNTSコストの付け替えがユニバーサルサービス制度におけるユーザー負担額の増加につながっていることから,NTSコストの段階的な付け替えを6年などに引き伸ばす案が検討されていた。

 しかし,接続委員会で議論した結果,付け替えの延長はなくなり,代わりに「NTSコストの一部を接続料による徴収に戻す」こととなった。その一部とは,き線点RT(remote terminal)とGC(加入者交換局)間の中継伝送路コスト。NTT東西は議論の当初から接続料による徴収に戻すことを主張しており,これが受け入れられた格好だ(関連記事)。ただ,激変緩和措置として2007年度分から5年間かけて段階的に戻していく。

IP電話の品質基準を変更し,安全・信頼性対策を義務化

 一方,(2)事業用電気通信設備規則等の一部を改正する省令案は,ネットワークのIP化に対応した技術基準の見直し。情報通信審議会から1月と5月に答申を受けた「0AB~J番号を使用するIP電話の基本的事項に関する技術的条件」と「ネットワークのIP化に対応した安全・信頼性対策」(関連記事)を踏まえ,事業用電気通信設備規則などを一部改正する。

 主な変更点は,0AB~J番号を利用したIP電話のネットワーク品質に関する規定の見直しや,安全・信頼性対策の義務化など。前者は「エンドtoエンドの遅延は150ミリ秒未満」「R値は80以上」とする現行基準に加え,UNI(user network interface)-UNI間とUNI-NNI(network-network interface)間の品質基準を規定した。具体的には,UNI-UNI間は「転送遅延時間は70ミリ秒以下」「転送遅延揺らぎは20ミリ秒以下」「パケット損失率は0.1%以下」,UNI-NNI間は「転送遅延時間は50ミリ秒以下」「転送遅延揺らぎは10ミリ秒以下」「パケット損失率は0.05%以下」とする基準を新たに追加する。

 後者の安全・信頼性対策は,前述した答申「ネットワークのIP化に対応した安全・信頼性対策」で規定された対策90項目のうち約50項目を省令や告示などに反映させた。通信事業者に対して対策を義務化するもので,「事業用電気通信設備の巡視や点検,検査」「情報セキュリティ対策」「事故が発生した場合の体制や報告,記録,措置,周知」などの規定がある。また今後は重大な事故に限らず,「つながりにくい」といったサービスの品質低下も総務省に報告することを義務付ける。

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